2026年06月13日

【書評】中野京子『歴史が語る 恋の嵐』

歴史に残された恋の話を24話収録です。

歴史が語る 恋の嵐 (角川文庫)

歴史が語る 恋の嵐 (角川文庫)

  • 作者: 中野 京子
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2009/02/22
  • メディア: 文庫


松井須磨子やマリリン・モンローといった有名人もいますが、少しマイナーな人物の話が面白いです。
鎌倉時代の大納言久我雅忠の女二条の母は、後深草上皇を初めての夜伽相手として愛していました。そこで娘も後宮に迎え入れようと、強引に関係を持ちます。
彼女は14歳。その後、上皇の子供を産みますが、ずっと相思相愛の恋人もいて、その彼氏の子供も産みます。
これだけのことが起こっても、まだ17歳です。これにはびっくり。
ヴィルヘルミーネ・フォン・ツンゲも面白いです。
平凡な女性だったのですが、熱烈な恋文をもらって婚約することになります。
それから婚約者は彼女に「ヴィルヘルミーネのための思考訓練 及び解答例」という珍妙な恋文を何度も送り付けてきます。
それからもいろいろあり、結果として婚約破棄となります。
珍奇な彼氏は、その後、劇作家として有名になりますが34歳で人妻とピストり自殺をします。
絵島の事件も面白いですし、マルグリット・デュラスと若い恋人の話も面白いです。
デュラスは高名な小説家でしたが、50代から作品を書かなくなり、飲んだくれ生活を送ってきました。
ですが、デュラスの前に若い男性ファンが現れ、恋におち、デュラスは創作意欲を取り戻します。
66歳と27歳の恋です。そうして生まれたのが「愛人」だったという話。

様々な恋の話を楽しみたいひとのために!
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2026年06月11日

【書評】中野京子『印象派で「近代」を読む/光のモネから、ゴッホの闇へ』

印象派について手軽に知ることができる新書です。

印象派で「近代」を読む 光のモネから、ゴッホの闇へ (NHK出版新書)

印象派で「近代」を読む 光のモネから、ゴッホの闇へ (NHK出版新書)

  • 作者: 中野 京子
  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2011/06/08
  • メディア: 新書


印象派は1860年代のフランスから始まりました。
それまでの絵は読むものでした。
神話や歴史から取られた主題があり、様々な小道具から描かれた人物が何者かを読み取り、画家が伝えたかったことを理解する。
印象派は読むより感じることを重視し、主題より感覚、形態より印象、絵具を混合しないことによる鮮やかな色彩、タッチの跡をあえて残す、といったところが特長です。
こうした予備知識を持ちながら絵を眺めると、なるほどなあと思います。
書籍で説明されていますが、当時はチューブ入り絵具が発売された時期です。それまでの画家は、絵を描く前に絵具を調合していたわけで、いやいや大変だと思います。
それであの超絶技巧ですから、そういう意味で新鮮な驚きです。
様々な絵画が紹介されていますが、定価を抑えるためか、白黒が多いのが残念です。
モネ『印象-日の出』、ドガ『エトワール』など目玉になる有名作品はカラーです。

印象派について知りたいひとのために!
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2026年06月09日

【書評】中野京子『「怖い絵」で人間を読む』

NHK教育テレビで使用されたテキストを加筆・訂正して再編集した本です。

「怖い絵」で人間を読む (生活人新書)

「怖い絵」で人間を読む (生活人新書)

  • 作者: 中野 京子
  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2010/08/06
  • メディア: 新書


中野京子の書籍でおなじみの絵がたくさん紹介されています。
「運命の章」ではベラスケスが描いたスペイン・ハプスブルク家の人々。
彼らの運命を知っていると、それにベラスケスの内面を抉り出すような超絶技巧も加わり、まるで肖像画の人物が話しかけてくるように見えてしまいます。
運命といえば「憎悪の章」で描かれているマリーアントワネット。
ルブランが華やかなロココ調の絵を残していますが、本人はギロチン台の露と消え、息子2人は病死と獄中死。娘だけが生き残ります。
そのような悲惨な末路を知っているだけに、悲哀を感じてしまいます。
ちなみにルブランは自画像が残っていますが、現代的でとても可愛いです。
マリーアントワネットなら未完成で終わった有名な肖像画もありますが、こちらも紹介して欲しかったなあ。
ベックリン『死の島』という有名作かつインパクト大の作品も紹介されています。

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2026年06月07日

【書評】中野京子『芸術家たちの秘めた恋 / メンデルスゾーン、アンデルセンとその時代』

アンデルセンの一方的な片思いを中心とする歴史小説です。

芸術家たちの秘めた恋 ―メンデルスゾーン、アンデルセンとその時代 (集英社文庫)

芸術家たちの秘めた恋 ―メンデルスゾーン、アンデルセンとその時代 (集英社文庫)

  • 作者: 中野 京子
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2011/07/20
  • メディア: 文庫


本書の主人公は3人です。
恵まれない家庭に生まれ、努力と行動で知名度を上げていったアンデルセン。
裕福な資産家の息子として生まれ、ユダヤ人であることからの人種差別に悩みつつ、若いころから音楽界の神童と言われて大活躍したメンデルスゾーン。
母から捨てられるという子供時代は最底辺の生活を送りますが、歌声の才能を見出され、国民的歌手になったジェニー・リンド。
ちなみにジェニーリンドの両親は本当にクソで、娘が有名になったとたんに、いままでのことを忘れて裁判まで起こしてたかりに入ります。
アンデルセンはオラウータンとあだ名されるほど容姿に恵まれません。
メンデルスゾーンは誰もが認める美男で、奥さんも美女です。
リンドは歌手ということあり、才能あふれるメンデルスゾーンに恋をしますが、もちろん家庭があるのでその恋は実りません。
アンデルセンは持ち前の行動力でリンドに何度もアタックし、リンドもアンデルセンを「お兄さん」と呼んで恋人とはみなせないことを伝えますが、アンデルセンアはまったくへこたれません。
そういった現代の恋愛小説みたいな展開が、歴史上の有名人の間であったということは、驚きでもあり、楽しくもあります。
メンデルスゾーンは若くして亡くなり、ジェニー・リンドは29歳でオペラ歌手から引退します。
一番長く活躍したのは、アンデルセンになります。
人生いろいろを思わせます。

アンデルセンの意外な一面を知りたいひとのために!
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2026年06月06日

【書評】マシュー・サイド『失敗の科学 / 失敗から学習する組織、学習できない組織』

失敗から学ぶことの重要性を指摘した本です。

失敗の科学

失敗の科学

  • 作者: マシュー・サイド
  • 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
  • 発売日: 2016/12/23
  • メディア: Kindle版


本書には様々なエピソードが紹介されていますが、特に印象に残ったのが、厳格な婦長がいる病院の話です。
厳格な婦長がいる病院ではミス事例が少なく「やはり厳格な姿勢が大事なのだ」と思われていました。
ところが、詳細に調べるとそれは単に「ミス事例の報告」が少ないだけで、実際のミスは厳格な婦長がいる病院が上回っていました。
この話の教訓は、失敗を非難することは、失敗から学ぶ姿勢を奪ってしまうということだと思います。

政治的理由から学説を排除してトンデモナイ災厄を引き起こした「ルイセンコ事件」も象徴的です。
ルイセンコ事件は極端ですが、ある学説が権威をもってしまい、他の学説の排除を始めると、恐ろしい間違いが起こることを示しています。
これは現在でもある種の論説・学説で見られます。
言論の自由の重要性を実感します。

失敗から学ぶ姿勢を奪ってしまう最大の要因は、無謬性を求める心、認知不協和がおきたときに自己正当化してしまう心の動きです。
よく知られている事実ですが、これを克服するのは並大抵ではありません。
10章の魔女狩り症候群も典型的です。
児童虐待によってある幼児が死亡したのですが、マスコミの非難はソーシャルワーカーに集中しました。
その結果、何が起きたかというと、ソーシャルワーカーの大量退職、さらには魔女狩りを恐れるあまり家庭への介入が早まり、親から引き離される子の激増、里親の不足から里親の質の低下です。
日本でも大淀病院事件で過度な非難が寄せられたことから、分娩の取り扱いをやめた病院が続出したことがありました。

大事なのは絶えず結果をフィードバックすることです。
人間として一番大事なのはやり遂げる能力。何度も失敗をして、フィードバックをくり返し、絶えず改善する姿勢だということに共感します。
哲学者カールポパー「真の無知とは、組織の欠如ではない、学習の拒絶である」は至言だと思います。
マネジメントという意味でも、自己啓発という意味でも、とても大事な本だと思います。

絶えず進歩したいと思っているひとのために!
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2026年06月04日

【書評】中野京子『はじめてのルーブル』

ルーブル美術館に収納されている美術品をストーリーとともに紹介です。

はじめてのルーヴル (集英社文芸単行本)

はじめてのルーヴル (集英社文芸単行本)

  • 作者: 中野京子
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2013/10/18
  • メディア: Kindle版


ルーヴルは世界屈指の美術館であるだけに、収納されている作品も膨大ですし、多彩です。
だからこそ、中野京子の筆が冴えわたります。
絵もさることながら、中野京子の解説も絶品なのがルーベンス『マリー・ド・メディシスの生涯』の連作です。
これは「画家の王」と称されて絵画史上屈指の評価を受けているルーベンスが、大富豪メディチ家のお嬢様で、金目当てのフランス王と結婚したものの夫には愛されず、夫の死後は政治に口を出して国内を混乱に陥れ、呆れた息子から幽閉され、ようやく許されて解放されたというどうしようもない女性と、国民的人気の高い夫の生涯を綴る連作を依頼されます。
しかも夫からではなく妻の人生から描けと。
並みの芸術家なら困るところですが、そこはプロ中のプロであるルーベンス。
なんと背景にギリシャ神話を使うことで、平凡な女性の人生を意味ありげに飾り立てることに成功します。
解説も面白いですし、この解説を読んでから絵を鑑賞すると、これまた絶品です。
絵としてはラファエロ『バルダッサーレ・カスティリネーオの肖像』も印象的です。
ラファエロというとルネッサンス三大巨匠で、天使や聖母子像で有名ですが、この作品はまったく作風が違います。
ルネッサンスの典雅端麗とは異なり、レンブランドのような時代を先取りした見事な陰影で人間の内面を抉り出そうとしています。
いろいろな美術品を多彩な解説で楽しめる逸品だと思います。

ルーヴル美術館に興味のあるひとのために!
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2026年06月02日

【書評】中野京子『マリー・アントワネット 運命の24時間』

ヴィレンヌ逃亡を描いたドキュメンタリータッチの本です。

マリー・アントワネット 運命の24時間 知られざるフランス革命ヴァレンヌ逃亡

マリー・アントワネット 運命の24時間 知られざるフランス革命ヴァレンヌ逃亡

  • 作者: 中野京子
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2012/02/17
  • メディア: 単行本


フランス革命直前、フランス王ルイ16世はパリのチェイルリー宮殿で幽閉状態に置かれていました。
宮殿を守るのは、改革派であるジャコバン党員。
贅沢好きとして国民の憎悪を一身に受けていたマリー・アントワネットの元に改革派が押し寄せて、殺されそうになったこともあります。
それぐらいの危機的状況でした。
そこで、アントワネットの恋人、スウェーデン貴族のフェルゼンが綿密な逃亡計画を立てます。
このころ、王妃は跡継ぎを産むのが仕事で、恋は跡継ぎを産んだ後という考え方が一般的です。だから現在の不倫とはちょっと感覚が違います。
準備万端整ったのですが、ルイ16世がいつもの優柔不断を発揮して煮えきらない。
何度も延期したあげく、ようやくパリから脱出したところで突如として脱出劇の立役者であるフェルゼンを切り捨てる。
外国人の貴族、しかも王妃の恋人の力を借りて脱出という対面の悪さからと著者は推測です。王の権威にかかわると。
そんなことを言っている場合ではないのですが。
フェルゼンを切り捨てたルイ16世は頻繁に休憩し、ときには住民と会話を交わし、さらには「陛下」と傅かれで認めてしまうという大失態を演じます。
ですが、ルイ16世は緊張感なく、のんびりと旅を続けます。
なんと5時間遅れ。
その結果、フェルゼンが用意して待機していた護衛は、住民から怪しまれて解散せざるを得なくなり(当時は自警団の力が強かった)、ルイ16世はヴィレンヌ村で捕まってしまいます。
本書はまるでリアルタイムのルポのように読めて、迫力があります。
それにしてもルイ16世の決断力のなさと現状認識能力の欠如にはあきれるばかりです。
アントワネットのほうがどれだけ立派だったか。
ルイ16世が細かい時刻を書き残してくれたおかげで、本書はまるでスパイ劇のように読めます。迫力があります。もう、一気に読んでしまいました。

歴史的事件であるヴィレンヌ逃亡について読みたいひとのために!
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2026年05月31日

【書評】中野京子『名画と建造物』

テーマは建造物ですが、名画を見るだけでも楽しめます。

名画と建造物 (角川書店単行本)

名画と建造物 (角川書店単行本)

  • 作者: 中野 京子
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2023/10/12
  • メディア: Kindle版


圧倒的に細密なのは、カナレット『カナル・グランデの入口』です。
まるで写真のようで、どうしたらこんなに細密な絵が描けるのか不思議です。
またクリムトといえは『接吻』をイメージしますが、本書では『旧ブルグ劇場の観客席』という綿密に描写した絵が紹介されています。クリムトのイメージが変わります。
ワリ―シ・スリコフ『銃兵処刑の朝』は、ロシア人らしく、どこかレーピンを彷彿とさせるタッチです。
建造物の絵といえばブリューゲル『バベルの塔』は欠かせません。もちろん紹介されています。
個人的に一番印象に残ったのはカスパー・ダーヴィト・フリードリッヒ『エルデナ修道院の廃墟』です。
廃墟というフレーズがわびさびを好む日本人の琴線にふれますが、廃墟を包む木々の淡い表現が幻想さを醸し出し、さらに手前の2人の人物がいい対比となる同時に画面にインパクトを与えていると思います。
他にも印象的な絵が満載です。

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2026年05月30日

【書評】中野京子『名画にみる男のファッション』

名画と中世西洋ファッションの組み合わせです。

名画に見る男のファッション (角川文庫)

名画に見る男のファッション (角川文庫)

  • 作者: 中野 京子
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2016/04/23
  • メディア: 文庫


基本的には1500~1600年代の荘厳で仰々しいゴシック様式から、1700年代の華やかで軽やかなロココ様式といった流れです。
このゴシック様式に珍品が多くて、1500年代には先のとがった靴が大流行しました。
あまりに流行りすぎて、庶民はつま先は足の長さの0.5倍まで、騎士は1.5倍まで、貴族は2.0倍、王族は2.5倍などという決まりまでできました。
また男子の局部を守るコドピースも流行です。
当初は局部を守るためでしたが、しだいに詰め物をして、どんどん巨大化し、最後はもう卑猥としかいいようながい姿になっています。
けど、当時はこれが流行だったんだよなあとか思います。
時代順に並んでいたら、もっと、分かりやすかったと思いますが、これは編集的には仕方がないのですかね。
そのたズボンやマント、1枚だけダンディーなスーツ姿もあります。
やつれた男性が聖子チャンカットをしている『聖ロクス』の絵もあります。

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2026年05月28日

【書評】中野京子『愛と裏切りの作曲家たち』

タイトルはドロドロですが、内容はオペラ作曲家たちの横顔です。

愛と裏切りの作曲家たち (光文社知恵の森文庫)

愛と裏切りの作曲家たち (光文社知恵の森文庫)

  • 作者: 京子, 中野
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2015/03/12
  • メディア: 文庫


現代こそオペラは上流階級が嗜みとして楽しむものですが、かつては現在の映画のようなものでした。
様々なオペラが、様々な箇所で上演され、観客たちはやいのやいのと楽しんでいました。
そんな時代のオペラ作曲家たちの紹介です。
妻子のために命をすり減らしてひたすら働いたヴェーバーもいれば、三十代半ばで名声を確立して資産家となり、その後は筆を追ったロッシーニもいます。
また生前は神童ともてはやされても、その後だれかも見向きもされず極貧のうちに死んだモーツアルトもいます。
かなり特異な経歴は『さまよえるオランダ人』を作曲したヴァーグナーです。
貧乏劇団で自作『恋愛禁制』を上演するも第1回目は演奏がメチャクチャ、2回目は観客が3人のうえに、劇団員が三角関係のもつれで上演中に殴り合いのけんかを始めて中断。
もうムチャクチャですが、それだけオペラが庶民に近かったということなのでしょう。
『蝶々夫人』を書いたプッチーニのスキャンダル事件など、大家たちの意外な一面が満載です。
オペラの知識がなくても、楽しめる本だと思います。

作曲家に興味のあるひとのために!
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