本能寺三部作のラストです。
明智左馬之助は明智光秀の重臣ですが、その正体は定かではありません。出自も様々な説があり、複数の別名が流布しています。光秀の従弟説もあります。
出自については著者は三宅氏説を取り、明智光秀の娘と幼いころから恋仲だったという設定で物語を始めます。
本書は左馬之助を語り手にして、秀吉との出世競争に明け暮れ、疲弊してく明智光秀を描きます。
明智左馬之介の見事さは、坂本城の明け渡しの逸話です。すでに光秀は山崎の戦いで敗北していましたが、坂本城に残る銘品を失うのは忍びないと、お宝を全て敵方に引き渡します。そして、自害しました。
本書は明智光秀と左馬之助から見た、本能寺を描いていきます。
それぞれのキャラクターや立ち位置がはっきりしており、光秀が真面目な秀才タイプであったために便利使いされて、疲弊していった様子が見えてきます。
著者独自の説もありますが、『信長の棺』『秀吉の枷』と続けて読んでいった読者なら、すんなりと納得できると思います。
本作は著者3作目ですが、1作ごとに文章が上達しているのが楽しいです。
明智光秀側から見た本能寺を読みたいひとのために!
2025年03月16日
2025年03月15日
【書評】小池寿子『謎解き ヒエロニムス・ボス』
ルネサンス期に活躍した、幻想的な画風で知られるボスの紹介です。
世代としてはレオナルド・ダビンチ、ボッティチェリとほぼ同世代です。
ボスはオランダで活躍しました。
現在まで伝わる絵は約20点(当時は署名がないため、由来、画風及び科学的分析から真筆と想定される絵の数)です。
代表作は『快楽の園』で、謎の生物、不思議な怪物、奇妙な建物が所狭しと配置されています。
とにかくセンスがすごいです。後年のブリューゲルに大きな影響を与えています。
『干し草車』『最後の審判』もボスという感じです。
絵はミケランジェロのような筋骨隆々でも、リアルでもありません。
ただ、それは、画力ではなくそのように描いたものだと思われます。
デッサンが残されていますが、画家だから当然かもしれませんが、とにかくうまいです。
ボスの堪能できる一冊だと思います。
ちなみにハプスブルク家のフィリップ1世がボスのパトロンになりますが、フィリップ1世の妻が有名な狂女フアナです。
ヒエロニムス・ボスの世界にじっくりとひたりたいひとのために!
世代としてはレオナルド・ダビンチ、ボッティチェリとほぼ同世代です。
ボスはオランダで活躍しました。
現在まで伝わる絵は約20点(当時は署名がないため、由来、画風及び科学的分析から真筆と想定される絵の数)です。
代表作は『快楽の園』で、謎の生物、不思議な怪物、奇妙な建物が所狭しと配置されています。
とにかくセンスがすごいです。後年のブリューゲルに大きな影響を与えています。
『干し草車』『最後の審判』もボスという感じです。
絵はミケランジェロのような筋骨隆々でも、リアルでもありません。
ただ、それは、画力ではなくそのように描いたものだと思われます。
デッサンが残されていますが、画家だから当然かもしれませんが、とにかくうまいです。
ボスの堪能できる一冊だと思います。
ちなみにハプスブルク家のフィリップ1世がボスのパトロンになりますが、フィリップ1世の妻が有名な狂女フアナです。
ヒエロニムス・ボスの世界にじっくりとひたりたいひとのために!
2025年03月13日
【書評】中野京子『美貌のひと2 時空を超えて輝く』
絵画を彩った美男美女シリーズその2です。
紹介されている絵画は女性の肖像画だけでなく、男性や神話の世界も含まれています。
その中でひときわ目を引くのは、『ヴィジュ=ルブラン(自画像)』です。マリー・アントワネットのお気に入りで、マリー・アントワネットの肖像画を多数残しています。自身の自画像も、美しいというより、とにかくかわいいです。
この自画像は仕事中のルブランを描いていますが、シンプルな服装に髪の毛をまとめた帽子、さらには赤いサッシュベルトがいいインパクトとなっており、画面が引き締まっています。
当時、彼女は35歳でフランス革命によって亡命中の身ですが、なにより画面全体から前向きな気持ちが伝わってきます。見ているだけで元気になるというか、絵の力を感じる作品だと思います。
ちなみに、当時は有名人の肖像画が人気で、注文がけっこうあったそうです。
伝グレイド・レーニ『ベアトリー・チェンチ』も印象に残ります。
彼女は貴族の子女でしたが、父殺しの疑いをかけられ、拷問によっておそらく冤罪を仕立て上げられ、処刑されます。
その獄中でのひとこま……という話ですが、最近の研究ではモデルも作者も違うという説が濃厚との話。
それでも、この絵が作家スタンダール『チェンチ一族』、画家フェルメール『青い首飾りの女』のインスピレーションの源になったというのも頷けます。
本書で紹介されているクララ・シューマンの人生も印象に残ります。
美貌のひとたちを鑑賞して癒されたいひとのために!
紹介されている絵画は女性の肖像画だけでなく、男性や神話の世界も含まれています。
その中でひときわ目を引くのは、『ヴィジュ=ルブラン(自画像)』です。マリー・アントワネットのお気に入りで、マリー・アントワネットの肖像画を多数残しています。自身の自画像も、美しいというより、とにかくかわいいです。
この自画像は仕事中のルブランを描いていますが、シンプルな服装に髪の毛をまとめた帽子、さらには赤いサッシュベルトがいいインパクトとなっており、画面が引き締まっています。
当時、彼女は35歳でフランス革命によって亡命中の身ですが、なにより画面全体から前向きな気持ちが伝わってきます。見ているだけで元気になるというか、絵の力を感じる作品だと思います。
ちなみに、当時は有名人の肖像画が人気で、注文がけっこうあったそうです。
伝グレイド・レーニ『ベアトリー・チェンチ』も印象に残ります。
彼女は貴族の子女でしたが、父殺しの疑いをかけられ、拷問によっておそらく冤罪を仕立て上げられ、処刑されます。
その獄中でのひとこま……という話ですが、最近の研究ではモデルも作者も違うという説が濃厚との話。
それでも、この絵が作家スタンダール『チェンチ一族』、画家フェルメール『青い首飾りの女』のインスピレーションの源になったというのも頷けます。
本書で紹介されているクララ・シューマンの人生も印象に残ります。
美貌のひとたちを鑑賞して癒されたいひとのために!
2025年03月11日
【書評】中野京子『美貌のひと 歴史に名を刻んだ顔』
中野京子の絵画エッセイ、今回は美人がテーマです。
本書は4章に分かれています。
第1章が「古典の中の美しいひと」、第2章が「あこがれの貴人たち」、第3章が「才能と容姿に恵まれた芸術家」、第4章が「創作意欲をかきたてたミューズ」です。
第1章で有名なクリヴェリ「グラタナのマリア」が紹介されています。
作者はルネサンス時代のボッティチェリと同時代人なのですが、手が妙に長いです。
てっきりこれが画家の実力かと思っていたのですが、同作家の別作品をみるとリアルな手になっています。
わざと手を長くして優美さを強調したそうです。
なるほど、と思いました。
古典派は裸体が多いです。神話を言い訳にしていますが、要するにエロの需要は高かったようで。
美人なのはクライムスコイ「忘れえぬひと」かなと思います。
トルストイの肖像画の作者ですが、トルストイの名作「アンア・カレニーナ」のアンナのモデルではないかと話題になったそうです。
どこか愁いを帯びた表情が、なんとも言えません。東洋的な顔立ちも、日本人好みだと思います。
マサイス「醜い侯爵夫人」もインパクト大です。
時代はボッティチェリと同世代になりますが、このような絵が流行していたそうです。
意外や意外です。
絵に関するウンチクがたくさんです。
絵画に残された美貌のひとたちを堪能したいひとのために!
本書は4章に分かれています。
第1章が「古典の中の美しいひと」、第2章が「あこがれの貴人たち」、第3章が「才能と容姿に恵まれた芸術家」、第4章が「創作意欲をかきたてたミューズ」です。
第1章で有名なクリヴェリ「グラタナのマリア」が紹介されています。
作者はルネサンス時代のボッティチェリと同時代人なのですが、手が妙に長いです。
てっきりこれが画家の実力かと思っていたのですが、同作家の別作品をみるとリアルな手になっています。
わざと手を長くして優美さを強調したそうです。
なるほど、と思いました。
古典派は裸体が多いです。神話を言い訳にしていますが、要するにエロの需要は高かったようで。
美人なのはクライムスコイ「忘れえぬひと」かなと思います。
トルストイの肖像画の作者ですが、トルストイの名作「アンア・カレニーナ」のアンナのモデルではないかと話題になったそうです。
どこか愁いを帯びた表情が、なんとも言えません。東洋的な顔立ちも、日本人好みだと思います。
マサイス「醜い侯爵夫人」もインパクト大です。
時代はボッティチェリと同世代になりますが、このような絵が流行していたそうです。
意外や意外です。
絵に関するウンチクがたくさんです。
絵画に残された美貌のひとたちを堪能したいひとのために!
2025年03月09日
【書評】中野京子『名画で読み解く イギリス王家12の物語』
名画で読み解く名家シリーズ、イギリス王家編です。
イギリスの王様といえばヘンリー8世です。
まさにモンスターな人生でしたが、チューダー朝はヘンリー8世の父で始まり、娘のエリザベス1世で終わってしまいます。
エリザベス1世とフェリペ2世との戦いは、この時期のハイライトです。
もちろん有名なホルバイン『ヘンリー8世像』ティッチアーノ『フェリペ2世像』、ドラローシュ『レディ・ジェーン・グレイの処刑』も掲載されています。
その次のスチュアート朝は革命の時代です。
先代王のツケを払わされたジェームス1世は議会と対立した挙句にクロムウェルに敗れて処刑されます。
時期に王制は復活しますが、ジェームス2世も名誉革命で追いだされます。
後世の創作ですがドラローシュ『チャールズ1世の遺体を見るクロムウェル』は、クロムウェルの複雑な心境が表にでているような絵で、印象深いです。
その子供の代でスチュアート朝は終わりを迎え、次に現代へとつながるハノーヴァー家へと受け継がれます。
王家はたくさんの肖像画を残していますが、中世の肖像画は超絶技巧もあれば、マンガみたいな絵もあります。
当時の肖像画はお見合い写真のような意味あいがあったようです。だから、適度に美化してくれる画家に人気があったとか。
アントニモス『メアリ1世像』はあまり美化した雰囲気を感じませんが、それはそれで興味深いです。
メアリ1世はヘンリー8世の娘で、エリザベス1世の前の女王です。
フェリペ2世と政略結婚をしますが、子供はできず、異母妹のエリザベス1世になるとフェリペ2世とは敵対関係になります。
とにかくいろいろな人物が入り乱れるので、そこが面白いところでもあり、難しいところでもあります。
イギリス王家の歴史を名画とともに楽しみたいひとのために!
イギリスの王様といえばヘンリー8世です。
まさにモンスターな人生でしたが、チューダー朝はヘンリー8世の父で始まり、娘のエリザベス1世で終わってしまいます。
エリザベス1世とフェリペ2世との戦いは、この時期のハイライトです。
もちろん有名なホルバイン『ヘンリー8世像』ティッチアーノ『フェリペ2世像』、ドラローシュ『レディ・ジェーン・グレイの処刑』も掲載されています。
その次のスチュアート朝は革命の時代です。
先代王のツケを払わされたジェームス1世は議会と対立した挙句にクロムウェルに敗れて処刑されます。
時期に王制は復活しますが、ジェームス2世も名誉革命で追いだされます。
後世の創作ですがドラローシュ『チャールズ1世の遺体を見るクロムウェル』は、クロムウェルの複雑な心境が表にでているような絵で、印象深いです。
その子供の代でスチュアート朝は終わりを迎え、次に現代へとつながるハノーヴァー家へと受け継がれます。
王家はたくさんの肖像画を残していますが、中世の肖像画は超絶技巧もあれば、マンガみたいな絵もあります。
当時の肖像画はお見合い写真のような意味あいがあったようです。だから、適度に美化してくれる画家に人気があったとか。
アントニモス『メアリ1世像』はあまり美化した雰囲気を感じませんが、それはそれで興味深いです。
メアリ1世はヘンリー8世の娘で、エリザベス1世の前の女王です。
フェリペ2世と政略結婚をしますが、子供はできず、異母妹のエリザベス1世になるとフェリペ2世とは敵対関係になります。
とにかくいろいろな人物が入り乱れるので、そこが面白いところでもあり、難しいところでもあります。
イギリス王家の歴史を名画とともに楽しみたいひとのために!
2025年03月08日
【書評】中野京子『名画で読み解く ブルボン王朝12の物語』
ブルボン王朝といえば、なんといってもルイ14世です。
ルイ十四世は太陽王と呼ばれましたが、若いころに宮廷舞台でアポロンに扮して踊ったことが由来だそうです。
意外でした。
当時のヨーロッパは王族同士の結婚が多く、かなり入り組んでいます。
『名画で読み解く ハプスブルグ家12の物語』と並べて読むと、逆側の立場もわかって、面白いです。
ブルボン朝は16世紀のアンリ4世から始まります。
アンリ4世の妻はメディチ家出身で、国家予算に匹敵する莫大な持参金を持ってきたためにフランスは助かります。
で、マリード・メディシスは平凡な女性なのですが、自らの人生を連作で描くようルーベンスに依頼して、困ったルーベンスは彼女の平凡な人生を神々に飾らせるという力技を発揮します。
なので、画面がなんか神々しいことになっています。ちょっと笑ってしまいます。
実際にはお親子喧嘩の末に幽閉・追放されるのですが。
息子のルイ13世時代に名宰相、リシュルーとマザランの手によってフランスは強大になり、その遺産を派手なルイ14世が継いだことでピークを迎えます。
このころの肖像画はマントを翻し、足を出していますが、この当時の脚線美は男性のものだったそうです。
知らない豆知識がたくさんです。
ここからが分かりにくいのですが、ルイ14世は長命で子孫が早世したので、あとを継いだルイ15世はひ孫です。
この2代で名宰相の遺産を完全に食いつぶし、ルイ15世の孫であるルイ16世の時代には首が回らなくなっています。
また、本人も平凡な能力だったそうです。
そうして革命によって逮捕され、マリーとともに斬首されてしまいます。
その後、混乱によって一時期王政は復活しますが、すぐにつぶされて、ブルボン朝は完全に終わります。
約250年の歴史でした。
ルイ14世の時代に、落日著しいスペインの跡継ぎ問題で介入し、孫を押し込むことに成功します。
この一族は直系こそ絶えたものの、母系を通じて現在のスペイン王へと続きます。
ブルボン朝はスペインで生き残ったといえるかもしれません。
中世ヨーロッパの歴史を知りたいひとのために!
ルイ十四世は太陽王と呼ばれましたが、若いころに宮廷舞台でアポロンに扮して踊ったことが由来だそうです。
意外でした。
当時のヨーロッパは王族同士の結婚が多く、かなり入り組んでいます。
『名画で読み解く ハプスブルグ家12の物語』と並べて読むと、逆側の立場もわかって、面白いです。
ブルボン朝は16世紀のアンリ4世から始まります。
アンリ4世の妻はメディチ家出身で、国家予算に匹敵する莫大な持参金を持ってきたためにフランスは助かります。
で、マリード・メディシスは平凡な女性なのですが、自らの人生を連作で描くようルーベンスに依頼して、困ったルーベンスは彼女の平凡な人生を神々に飾らせるという力技を発揮します。
なので、画面がなんか神々しいことになっています。ちょっと笑ってしまいます。
実際にはお親子喧嘩の末に幽閉・追放されるのですが。
息子のルイ13世時代に名宰相、リシュルーとマザランの手によってフランスは強大になり、その遺産を派手なルイ14世が継いだことでピークを迎えます。
このころの肖像画はマントを翻し、足を出していますが、この当時の脚線美は男性のものだったそうです。
知らない豆知識がたくさんです。
ここからが分かりにくいのですが、ルイ14世は長命で子孫が早世したので、あとを継いだルイ15世はひ孫です。
この2代で名宰相の遺産を完全に食いつぶし、ルイ15世の孫であるルイ16世の時代には首が回らなくなっています。
また、本人も平凡な能力だったそうです。
そうして革命によって逮捕され、マリーとともに斬首されてしまいます。
その後、混乱によって一時期王政は復活しますが、すぐにつぶされて、ブルボン朝は完全に終わります。
約250年の歴史でした。
ルイ14世の時代に、落日著しいスペインの跡継ぎ問題で介入し、孫を押し込むことに成功します。
この一族は直系こそ絶えたものの、母系を通じて現在のスペイン王へと続きます。
ブルボン朝はスペインで生き残ったといえるかもしれません。
中世ヨーロッパの歴史を知りたいひとのために!
2025年03月06日
【書評】中野京子『名画で読み解く ハプスブルグ家12の物語』
名画で読み解く名家シリーズの第1弾です。

ハプスブルグ家は中世ヨーロッパの中心でした。
オーストリアを支配すること650年、分家であるスペイン・ハプスブルグ家もスペインを200年に渡り支配しました。
その間、スペインは黄金時代を迎えています。
ハプスブルグ家の栄光は13世紀、神聖ローマ帝国皇帝に選出されたルドルフ一世から始まります。
その後、16世紀にスペイン王を兼ねたカール五世が登場し、一気に勢力をひろげます。
しかし、その後はカール五世の息子であるフェリペ2世を頂点として徐々に衰退します。
スペイン・ハプスブルグ家は極端な血族結婚(叔父と姪とか)をくり返し、子供たちは夭折、不出来、が頻発し、フェリペ2世のひ孫の代でスペイン・ハプスブルグ家は血脈が途絶えます。
それにしても絵は偉大です。
宮廷画家のベラスケスが衰退するハプスブルグ家の肖像画を残していますが、その人物が身にまとう雰囲気も伝わってきます。
オーストリア・ハプスブルグ家は第一次世界大戦まで続きます。
そのころになると、王政はもうどうにもならくなっていますが、最期はパッタリと倒れます。
新書なのでかなり駆け足ですが、大まかな流れを知ることはできると思います。
ハプスブルグ家の栄光の歴史を駆け足で知りたいひとのために!

名画で読み解く ハプスブルク家12の物語 (光文社新書 366)
- 作者: 中野 京子
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2008/08/12
- メディア: 新書
ハプスブルグ家は中世ヨーロッパの中心でした。
オーストリアを支配すること650年、分家であるスペイン・ハプスブルグ家もスペインを200年に渡り支配しました。
その間、スペインは黄金時代を迎えています。
ハプスブルグ家の栄光は13世紀、神聖ローマ帝国皇帝に選出されたルドルフ一世から始まります。
その後、16世紀にスペイン王を兼ねたカール五世が登場し、一気に勢力をひろげます。
しかし、その後はカール五世の息子であるフェリペ2世を頂点として徐々に衰退します。
スペイン・ハプスブルグ家は極端な血族結婚(叔父と姪とか)をくり返し、子供たちは夭折、不出来、が頻発し、フェリペ2世のひ孫の代でスペイン・ハプスブルグ家は血脈が途絶えます。
それにしても絵は偉大です。
宮廷画家のベラスケスが衰退するハプスブルグ家の肖像画を残していますが、その人物が身にまとう雰囲気も伝わってきます。
オーストリア・ハプスブルグ家は第一次世界大戦まで続きます。
そのころになると、王政はもうどうにもならくなっていますが、最期はパッタリと倒れます。
新書なのでかなり駆け足ですが、大まかな流れを知ることはできると思います。
ハプスブルグ家の栄光の歴史を駆け足で知りたいひとのために!
2025年03月04日
【書評】中野京子『名画で読み解く ロマノフ家12の物語』
名画で読み解く王朝シリーズの第3段です。
タイトルは著明な「ロマノフ家」となっていますが、その前のイワン雷帝から続くリューク朝も含まれています。
イワン雷帝が即位した1533年からニコライ二世が退位した1917年まで19代380年の歴史を駆け足でつづります。
ロシア王朝の歴史を見ると、女帝が多く、しかも血族ではない皇帝の妻が2人も即位しています。
しかもエカテリーナ二世は夫の殺害を黙認して戴冠し、領土を拡大し、巨人ピョートル二世と並んで大帝と称されます。
ドイツのフリードリッヒ大王と争い、あと一歩のところまで追い詰めました。
エカテリーナの孫がアレクサンドル一世で、凡庸な君主だったようですが、クトゥーゾフを採用してナポレオンを打ち破ります。
そこから100年、弟のひ孫の代で、ロマノフ家は滅亡します。
ニコライ二世は家族思いのいいひとだったようですが、政治家としてはいまひとつだったようです。日ロ戦争で敗れ、第一次世界大戦で甚大な被害をこうむり、さらには政務を放り出して長期休暇の連続、さらにはラスプーチンがのさばり、どんどん孤立していきます。
日本とはあまりに違う権力争いの激しさに驚かされます。
こうした歴史を、名画を通じて見せてくれます。
ロシアの王朝を駆け足で知りたいひとのために!
タイトルは著明な「ロマノフ家」となっていますが、その前のイワン雷帝から続くリューク朝も含まれています。
イワン雷帝が即位した1533年からニコライ二世が退位した1917年まで19代380年の歴史を駆け足でつづります。
ロシア王朝の歴史を見ると、女帝が多く、しかも血族ではない皇帝の妻が2人も即位しています。
しかもエカテリーナ二世は夫の殺害を黙認して戴冠し、領土を拡大し、巨人ピョートル二世と並んで大帝と称されます。
ドイツのフリードリッヒ大王と争い、あと一歩のところまで追い詰めました。
エカテリーナの孫がアレクサンドル一世で、凡庸な君主だったようですが、クトゥーゾフを採用してナポレオンを打ち破ります。
そこから100年、弟のひ孫の代で、ロマノフ家は滅亡します。
ニコライ二世は家族思いのいいひとだったようですが、政治家としてはいまひとつだったようです。日ロ戦争で敗れ、第一次世界大戦で甚大な被害をこうむり、さらには政務を放り出して長期休暇の連続、さらにはラスプーチンがのさばり、どんどん孤立していきます。
日本とはあまりに違う権力争いの激しさに驚かされます。
こうした歴史を、名画を通じて見せてくれます。
ロシアの王朝を駆け足で知りたいひとのために!
2025年03月02日
【書評】加藤廣『秀吉の枷』
本能寺3部作の第2弾です。
第1弾は『信長の棺』で歴史ミステリーとして歴史に残るベストセラーになりました。
累計発行部数250万部です。
『信長の棺』は著者の初小説ですが、なんと75歳です。
第2弾『秀吉の枷』は1年後なので、著者76歳のときの作品です。
ざっくりとしたストーリーですが、世界観は『信長の棺』を受け継いでいます。
『信長の棺』は信長の死体がどこに消えたのかを、信長記の著者である太田牛一が探すミステリーです。
本作は秀吉が主人公で、信長を死に追いやったことを苦悩しつつ、天下取りへと爆走します。
後半は子供が生まれないことに苦しみ、明らかに他人の種だと分かる息子に悩みます。
秀吉の謎の行動については、この2つをキーにすれば解けていくのではないか、というのが著者の主張だと思われます。
前作より構成がすっきりしており、小説としてはるかに読みやすかったです。
キャラクターの立ち位置もはっきりしており、エンタメとして分かり易いです。
小説に仮託した著者の考察はともあれ、それなりに筋が通っており、ミステリとしても面白かったです。
楽しめる小説だと思います。
歴史ミステリを堪能したいひとのために!
第1弾は『信長の棺』で歴史ミステリーとして歴史に残るベストセラーになりました。
累計発行部数250万部です。
『信長の棺』は著者の初小説ですが、なんと75歳です。
第2弾『秀吉の枷』は1年後なので、著者76歳のときの作品です。
ざっくりとしたストーリーですが、世界観は『信長の棺』を受け継いでいます。
『信長の棺』は信長の死体がどこに消えたのかを、信長記の著者である太田牛一が探すミステリーです。
本作は秀吉が主人公で、信長を死に追いやったことを苦悩しつつ、天下取りへと爆走します。
後半は子供が生まれないことに苦しみ、明らかに他人の種だと分かる息子に悩みます。
秀吉の謎の行動については、この2つをキーにすれば解けていくのではないか、というのが著者の主張だと思われます。
前作より構成がすっきりしており、小説としてはるかに読みやすかったです。
キャラクターの立ち位置もはっきりしており、エンタメとして分かり易いです。
小説に仮託した著者の考察はともあれ、それなりに筋が通っており、ミステリとしても面白かったです。
楽しめる小説だと思います。
歴史ミステリを堪能したいひとのために!
2025年03月01日
【書評】山口真一『正義を振りかざす「極端な人」の正体』
SNSで過激な投稿を繰り返す人々についての分析です。
ネットで過剰に他人を非難する投稿が目立ちます。
筆者の研究ではその投稿者はごく少数で、炎上事件に参加するユーザーは0.0015%であり、しかもそのうちの1.3%の投稿が14%を占めるということでした。
しかも投稿数はべき乗の法則にしたがう傾向があり、1番目が60投稿なら2番目は30、3番目は20、4番目は15……と、ごく少数の人々が原因とのことです。
基本的に中庸のひとは書き込まないので、極端なひとが意見表明をくり返し、しかも一方的に発信できるので、より過激になる。
という流れのようです。
しかも本人は「正義」と思い込んでいるからタチが悪い。民事裁判で勝訴しても、賠償金を素直に払ってくれないという実態もあります。
規制すべきという声が上がるのも当然ですが、筆者はやや否定的です。
「他に手は尽くしたか」「効果の対象を絞り込めるのか」の2点が大事と主張しますが、同感です。
筆者は民事訴訟のハードルを下げるという案を出していますが、とてもよい提案だと思います。
すきなくとも、悪用される可能性がある規制・規制で縛るよりかは。
炎上騒動について考えたいひとのために!
ネットで過剰に他人を非難する投稿が目立ちます。
筆者の研究ではその投稿者はごく少数で、炎上事件に参加するユーザーは0.0015%であり、しかもそのうちの1.3%の投稿が14%を占めるということでした。
しかも投稿数はべき乗の法則にしたがう傾向があり、1番目が60投稿なら2番目は30、3番目は20、4番目は15……と、ごく少数の人々が原因とのことです。
基本的に中庸のひとは書き込まないので、極端なひとが意見表明をくり返し、しかも一方的に発信できるので、より過激になる。
という流れのようです。
しかも本人は「正義」と思い込んでいるからタチが悪い。民事裁判で勝訴しても、賠償金を素直に払ってくれないという実態もあります。
規制すべきという声が上がるのも当然ですが、筆者はやや否定的です。
「他に手は尽くしたか」「効果の対象を絞り込めるのか」の2点が大事と主張しますが、同感です。
筆者は民事訴訟のハードルを下げるという案を出していますが、とてもよい提案だと思います。
すきなくとも、悪用される可能性がある規制・規制で縛るよりかは。
炎上騒動について考えたいひとのために!