2026年01月26日

【SS】齊藤想『裏窓と日本食』(ChatGPT_92点)

第15回W選考委員版小説でもどうぞ「勘違い」に応募した作品です。
テーマが「勘違い」なので、ストレートに勘違いする話にしましたが、少しスパイスを利かせて「バカみたいな詐欺に騙された」話にしてみました。
オチとしてはインフレーション系が考えられますが、本作ではそもそも人違い、つまり前提条件をひっくりかえす系統にしています。
萩原と荻原は有名ですが、もうひとつがちょっと思い浮かばずに難航しました。
こういうときのために、絶えずネタを貯えておく必要があるのですが。

こんな感じで、具体的な技法を無料ニュースレターで紹介します。
次回は2/5発行です。



・基本的に月2回発行(5日、20日※こちらはバックナンバー)。
・新規登録の特典のアイデア発想のオリジナルシート(キーワード法、物語改造法)つき!

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『裏窓と日本食』 齊藤 想

 初デートがVシネマ鑑賞になるとは、思いもしなかった。
 地方出身の荻原が、祐子と出会ったのは一週間前。ネットの映画掲示板で意気投合したのがきっかけだ。当然ながら、まだ手も握っていない。それなのに、目の前のスクリーンでは、あられな姿をした男女がひたすら濡れ場を演じている。
 いたたまれなくなった萩原が、祐子に声をかける。
「ちょっと、出ようか……」
「でも……」
 祐子は通路側の席を見た。中年男性がズボンの中に手を入れている。反対側の初老男性は、ズボンのベルトを緩めている。
 萩原はため息をついた。映画が終わるまで動けそうにない。悪夢から逃れるために、目と耳をふさぐしかなかった。
 そもそも萩原が勘違いしたのは、映画に紛らわしいタイトルがついていたせいだ。
 小さな映画館で『裏窓』のリバイバル上映がされるとネットで紹介されていたから、思い切って祐子を誘ったのだ。
 そうしたら『裏窓』ではなくて『裏穴ム心』で、後ろの3文字はあえて上下圧縮する悪質さだ。上映されているのはヒッチコック監督の名作ではなく、裏側の穴に無心でしゃぶりつく変態男のストーリー。監督名もヒッチコックではなく、ヒッチコックリ監督になっている。間違えない方がおかしい。
 苦痛の1時間30分が終わった。もちろん映画の感想などあったものではない。
 祐子は困惑の表情を浮かべている。このままデートを終えるわけにはいかない。次こそ挽回しなくては。
 萩原は、祐子に優しく声をかけた。
「今日はゴメンね。食事にでもいこうか」
「はい……」
 祐子は小さくうなずいた。
 萩原が祐子を招待したのは、ネットで見つけた穴場の日本食レストランだ。ミシュランで星3つ獲得と紹介されている。
 地図アプリを頼りにお店に行くと、場所は薄暗い裏路地で、しかもいまにも潰れそうな魚屋の二階に店を構えている。
 もちろんお客は萩原と祐子だけ。
 不安を抱えながらお任せコースを頼むと、出てきたのはマグロの目玉の味噌煮込みだった。祐子が割烹着姿のおばさんに聞かれないよう、萩原の耳元でささやく。
「これがミシュラン星3つ……なの?」
「確かにそう紹介されていたけど……あ!」
 萩原がスマホで確認すると、なんとミシュランではなくミツェランと書かれている。また騙された。おまけに日本食の日の中に余計な点がある。日本食ではなく、目本食ではないか。
 次から次へと出てくる目玉を本格的に食べる料理。略して目本食。
 まさに詐欺ではないのか。
「目玉はコラーゲン豊富といいますし」
 祐子は、目玉に箸を付け始めた。その様子は、どこかやけくそのようにも見えた。

 最悪のデートは終わった。いままで萩原は田舎住まいだっただけに、東京の恐ろしさを痛感した。人の勘違いを誘って騙そうとする魑魅魍魎が、こんなにもいるなんて。
 祐子も東京は初めてのはず。知らない人どうしが、見事に食い物にされた。
 それなのに、祐子は不思議なほど笑顔になっている。
「荻原さんは面白い人ですね。掲示板での自己紹介そのままです。私の知らない東京をたくさん紹介してくれました」
 そんな紹介したかなあ。それに祐子も東京が初めてのはずでは。
 ふと、萩原は気が付いた。
「祐子さん、ちょっと待って。おれは荻原じゃなくて、萩原だよ。オギじゃなくて、ハギ。もしかして、勘違いしているとか」
 祐子も目を白黒させている。
「私も祐子ではなく、裕子です。ユウではなくヒロ」
 えっ、と二人は固まった。
「もしかして、二人とも勘違い?」
「お互いに、同じ掲示板にいた似た名前のひとにメッセージを送って、それが繋がって……そんな偶然があるのですね。けど、今日は楽しかった。また、遊びにいきましょう」
「よろしくお願いします。今度は祐子……じゃなかった、裕子さんから東京を教わりたいです」
 裕子は小さく笑った。
「いいですよ。今度こそ、お互いに自己紹介から始めましょうね」
「そうですね」
 始めて手を握りながら、萩原は思った。
 勘違いから生まれる出会いも悪くない。萩原はそう思った。

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posted by 齊藤 想 at 21:00| Comment(0) | 自作ショートショート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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