2026年01月19日

【SS】齊藤想『サナと過ごした十年間』(ChatGPT_85点 ※選外佳作)

今月のテーマは「寄生」でした。ありがたいことに選外佳作をいただきました。
選外佳作としては10回目です。

主人公は大きな昆虫に魅せられ、育てます。その昆虫を「サナ」と名付けて可愛がります。
しかし彼に体力的な限界がきて、「サナ」を手放すことになる。
その「サナ」とは「サナダムシ」でした、というのがオチです。
本当はミスリーディングの仕掛けをすべきですが、思いつかず、和名の「寸白」を使用することにしました。マイナーなので、「寸白」と聞いて、「サナダムシ」には結びつかないだろうと。
この手法はミステリなどでときおり見られます。手法としては「聞き間違い」の上位互換ですかね。
頻繁に使える技法ではありませんが、ひとつのアイデアとして、知っておくと良いかもしれません。

こんな感じで、具体的な技法を無料ニュースレターで紹介します。
次回は2/5発行です。



・基本的に月2回発行(5日、20日※こちらはバックナンバー)。
・新規登録の特典のアイデア発想のオリジナルシート(キーワード法、物語改造法)つき!

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『サナと過ごした十年間』

 大きな虫に情熱を燃やすようになったのは、小学校5年生のときの林間学校での昆虫採集がきっかけだった。
 体験学習として、クラス全員による虫取りをしたのだが、私が捕えたトンボが抜群に大きかった。黒い体に黄色の縞模様。見た目も抜群にかっこいい。
 先生は目を見張った。
「お、これはオニヤンマだ。珍しいなあ」
「オニヤンマというのですか?」
「そう。日本で一番大きなトンボだ」
 クラスのみんなは、私が持つオニヤンマを羨ましがった。
 このときの成功体験が、私を虫の世界へといざなうことになった。
 愛読書が昆虫図鑑とファーブル昆虫記になった。スマホに触れる時間が減った。近所の草むらでショウリョウバッタを探すようになった。バッタの種類によって、食べる草が違うことも知った。
 ますます虫の世界にのめり込んだ私は、父親に頼んで山でキャンプを張り、ミヤマクワガタを捕まえにいった。雑木林で灯りをぶら下げて、ヤママユという大型の蛾が集まってくるのをうっとりと眺めた。
 真っ暗な雑木林の中で蛾を見て楽しむなんて、周囲からしたら気色の悪い小学生と思われたかもしれない。しかし、好きなことに熱中することに、良いも悪いもないのだ。
 そのうち、私は虫を卵から育てることに興味を覚えるようになった。カブトムシやオオクワガタは、1cm単位で値段が違う。ひときわ大きな個体は高額で取引される。
 大人になったら、世界一大きな虫を育てよう。私はそう決心した。
 虫を育てるのは体力勝負。私はスポーツのためではなく、虫を育てるために体を大きくしようと考えた。
 牛乳を飲み、ひたすら走り込んだ。バスケをすると身長が伸びると聞いたので、中学入学とともにバスケ部に入部した。
 身長は思ったより伸びなかったが、3年間で体力はついた。
 私のあこがれは、東南アジアに住む世界最大の虫を育てた老人だ。小柄でやせ形だが、無限の体力と、その体力を支える強靭な内臓を持っていたのだろう。
 老人の姿を見て、私の情熱はますます燃え上がる。
 私は好き嫌いを言わずに、何でも食べるようになった。胃腸を鍛えるために、少しぐらい古くなった牛乳も平気で飲んだ。ゲテモノ食いにまで手を染めた。生肉までかみ切れるようになった。
 ときおり母親から怒られたが、将来の夢を思うと、ここで努力を中断することはできない。目指すは、世界記録なのだ。
 私は大学で生物学を専攻し、アフリカや東南アジアでの研究に従事する機会を持った。
 始めて見た野生のヘラクレス・オオカブトに感動した。顔が隠れるぐらい大きなアトラスモスが指に止まったときは、小学校以来の興奮を覚えた。世界一重いゴライアスオオツノハナムグリを手にしたときには、その重量感に神々しさまで感じた。
 大きいは正義。私はますます大きい虫にあこがれを持つようになった。
 虫の世界に没頭しているうちに、私は四十代になった。
 準備は万端だった。
 私は研究を続ける一方で、子供のころからの夢だった巨大な虫を育てるための飼育を開始した。
 私は「寸白」と呼ばれる扁形動物門に属する虫の卵を、東南アジアの農村地帯で採取した。10年以上の寿命を持ち、育てれば育てるほど巨大化する可愛い虫だ。
 検疫で没収されないように、秘密裏に日本国内に持ち込んだ。
 私は、この虫を10年以上育てる決心をした。私はその虫を可愛がるために「サナ」と名づけた。雌雄同体だが、雌だと思い込むことにした。
 私は「サナ」を決して手放さなかった。論文執筆のための現地調査のときも、手元に置き続けた。「サナ」と何度も一緒に飛行機に乗った。まさに一心同体だった。
 「サナ」を飼育するために、私は全力を尽くした。「サナ」こそ私の生きがいであり、全ての目標だ。
 「サナ」は大きいだけに、飼育はまさに肉体労働だ。「サナ」が成長するたびに、飼育の負担が増していく。
 私は体力を維持するために、炭水化物と脂肪を積極的に摂取した。病気にならないよう栄養バランスも万全の注意を払った。
 それでも10年間は長い。五十代になると体力が一気に落ちた。
 もう限界だった。断腸の思いで、私は「サナ」を手放すことにした。
 私は「サナ」とともに、病院に駆け込んだ。世界記録が更新されたことを願いながら。

「こんなに大きいのは、初めて見ました」
「よく今まで生きてこれましたね」
「あともう少しです。頑張ってください」
 看護婦たちは、私の体内から出てきた巨大な寸白……現在ではサダナムシと呼ばれている寄生虫を見て、驚愕の声を上げた。
 私はへこんだお腹を労わりながら、看護婦たちに聞いた。
「それで、サナの体長は何メールですか?」
 世界記録は18mだ。看護婦は怪訝な顔をした。
「サナ? ああサナダムシのことですね。先ほど計りましたら、17.5mでしたよ」
 私は愕然とした。あと少し足りなかった。
 だが、チャレンジに失敗したことで、かえって不思議な熱意が沸きあがる。
 新しい10年間が、始まろうとしている。

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posted by 齊藤 想 at 21:00| Comment(0) | 自作ショートショート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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