2025年12月08日

【掌編】齊藤想『笑顔の力』(ChatGPT_92点)

「未来に繋ぐ転生玩物語」に応募した作品その2です。

テーマが郷土玩具なので、選んだのは千葉県船橋市の「バカ面」です。主催者HPにおススメ郷土玩具が紹介されていたのですが、あえておススメを外しました。
その方が新規性がでるかなと思いまして。
バカ面が主題なので、主人公は笑顔を無くした少女としました。これは逆の要素を組み合わせるパターンになります。
となればラストは定番なのですが、あえて捻る必要もないかなと考え、素直な着地としています。定番には定番の安心感というか、良さがありますので。

こんな感じで、具体的な技法を無料ニュースレターで紹介します。
次回は1/5発行です。



・基本的に月2回発行(5日、20日※こちらはバックナンバー)。
・新規登録の特典のアイデア発想のオリジナルシート(キーワード法、物語改造法)つき!

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 『笑顔の力』 齊藤 想

 笑顔の力なんて、信じない。
 小学生時代、美咲はイジメられていた。原因はわからない。たぶん、周囲の女子より少し見た目が良いとか、親が高級志向で持ち物がブランド品とか、そうした小さな違いが異分子として疎外の対象にされてしまったのだと思う。
 仲間に入れてもらおうと声をかけても、同級生たちはすっと遠ざかる。完全な無視とは少し違う。お高いところに勝手に祭り上げられている感じだ。学級委員長も押し付けられた。
 苦しいことがあると、美咲は近所に住む祖母に相談した。祖母の家にはお面がたくさんある。祖母は黙って聞きながら、いつも「笑顔になれば、なんとかなる」を繰り返す。「イジメられているのに笑顔なんてムリ」と言うと、「そのときはお面を被ればいいのさ」と笑い飛ばす。
 小学生のときは、祖母のアドバイスを素直に聞いていた。けど、ムリな笑顔が余計に「キモイ」と言われた。イジメが酷くなった。中学時代には、無表情というお面を被るようになった。
 小学校、中学校とずっとひとりだった。むしろ、ひとりでいることに安らぎを覚えた。休み時間は図書室にこもり、誰とも接しないようにした。家族とも最低限の会話しか交わない。祖母の家にも近づかなくなった。
 家族であろうと祖母であろうと、ひとと話すと、無表情というお面が剥がれそうで怖かった。
 そんな祖母は、美咲が高校時代に、長い闘病生活の末に息を引き取った。肺がんだった。全身に転移して体中が痛いはずなのに、最後まで笑顔を浮かべていた。
「美咲の笑顔を、もう少し見たかったねえ」
 これが祖母の唯一の愚痴だった。
 家族で祖母の遺品を整理していると、押し入れの中から「ばか面」が出てきた。「ばか面」は祖母の出身地である千葉県船橋市に伝わる伝統芸能で、少しおかしみのあるお面を被って、お囃子にあわせて踊る。
 祖母のばか面は自作だ。子供のころに祖母に見せてもらっていたのだが、すっかり忘れていた。
 祖母のばか面は、ひょっとこをベースに、口のとがりが極端に誇張されている。周りを笑顔にしよう、少しでも楽しんでもらおう、そのような気持ちがあふれ出るお面だった。
 美咲はばか面を手に取った。下地の新聞紙の匂いが、また残っている。祖母の体温が、どこかしら感じられる。
 美咲は、ばか面を被った。それを見た母が笑った。父もほほえんだ。
 ばか面で隠している無表情が、崩れていく。
 笑顔の力を、少しだけ信じようと思った。

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posted by 齊藤 想 at 21:00| Comment(0) | 自作ショートショート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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