2025年07月14日

【掌編】齊藤想『おせっかいな隣人』_ChatGPT90点

第45回小説でもどうぞ!に応募した作品です。テーマは「隣人」でした。
ありがたいことに、選外佳作をいただきました。
本作はよくある認知症ネタです。この手のネタは、「いかに認知症と悟られずに、伏線を散りばめることができるか」が勝負だと思っています。
なんだかんだと車に乗ってしまうところ、料理の仕方を忘れてしまうところ、それどころか包丁の場所も忘れてしまうところ、が伏線になります。
伏線の順番としては、軽度から重度という流れが作法です。
ただ読み返すと、ちょっと伏線が遅いかな、という気がします。
次回以降の反省点ということで。

こんな感じで、具体的な技法を無料ニュースレターで紹介します。
次回は8/5発行です。



・基本的に月2回発行(5日、20日※こちらはバックナンバー)。
・新規登録の特典のアイデア発想のオリジナルシート(キーワード法、物語改造法)つき!

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 『おせっかいな隣人』 齊藤 想

 お隣さんには腹がたつ。わしが一人暮らしの老人だからといって、どこかバカにしておる。いつも台所の小窓が開いていて、その窓からわしのことを監視している。
 6部屋しかない小さいアパートなので、ゴミ捨てとか、買い物とか、そうしたときにどうしても顔を合わせてしまう。
「あら、広永さん。これからゴミ捨てですか。重そうなので手伝いましょうか」
 とか、
「買い物なら一緒に行きましょう。コンビニ弁当ばかりじゃ体に悪いですよ。これから車を出しますから」
 とか、とにかくお節介をかきたがる。こちとら、何年一人暮らしをしてきたと思っているのだ。多少、体にガタはきているが、まだまだ元気。健康に何の不安もない。買い物ぐらいひとりでできるわ。
「ふん」
 と言いながらも、ついついお隣さんの車に乗ってしまう。楽には勝てぬ。とはいえ、嫌味を言うのは忘れない。
「ところで、お隣さんは昼間は何をしているのか。毎日家にいて、暇なじゃないのか」
 お隣さんは、ふふふ、と笑う。
「こう見えて、いろいろ忙しいのですよ」
「ふん、男か。わしだって、お隣さんにときおり若い男がくることを知っておる」
「あらよくご存じで。けど、若いと言っても2歳差ですよ」
「そいつは夫か、愛人か」
「まあ、とりあえず旦那ではありませねえ」
 お隣さんは、ふふふ、と笑いながら平然と答える。わしは憤慨した。いい年して愛人を作りおって。恥ずかしくないのか。
「広永さんに嫉妬されるなんて嬉しいわあ。ほめ言葉をありがとね」
「ほめとらんがなな」
 そうこう話しているうちに、お隣さんの車はスーパーに到着した。お隣さんはわしの買い物にも口をはさんでくる。カップラーメンはダメだとか、冷凍食品ばかりでは体を壊すとか、骨を強くするために牛乳を飲めだとか。
「わしは老い先短いのだ。好きなものを好きなだけ食わせんかい」
「何を言うのですか。広永さんが部屋のなかで孤独死したら、迷惑するのはこっちなんです。だから、栄養満点の手料理をふるまってあげますから」
「うるさい。料理ぐらいわしもできるわ」
 売り言葉に買い言葉。お隣さんに強引にカゴに入れられた野菜と豚肉で、野菜炒めにチャレンジだ。
 ふん、みておれよ。逆にお隣さんにわしの手料理をふるまってやる。
 わしはフライパンを出し、IHヒーターのスイッチを入れ、油をひいて……えっと、どうするんだったかな。長いこと料理はしていない。野菜と肉を炒めればいいだろう。そもそも野菜をどう切るんだ。包丁どころかまな板すら見当たらない。
 結局、お隣さんの助けを借りた。しばらくして、目の前にボリューム満点の野菜炒めが運ばれてくる。
「ほら、おいしそうでしょう。広永さんも、ちゃんとしたご飯を食べないとね」
「お前が勝手にカゴにいれるからだ。そういえば、いつもの男はどうした。今日はこない日なのか」
「あら、広永さん。彼ならここに呼んでいるわよ」
「なぬ!」
 わしが態勢を立て直す間もなく、玄関のチャイムが鳴った。お隣さんが嬉しそうに、男を部屋に招き入れる。
「あら、いらっしゃーい」
「おい、こら。ここはわしの部屋だ。勝手に男を入れるな」
「まあいいじゃないの。悪いひとじゃないんだから」
 男はわしのことなど気にすることなく、部屋に入ってくる。そして、手にしているコンビニのビニール袋を高く掲げた。
「やあ、広永さん。お元気そうでなにより。今日は一緒に飲みましょう。お、これはおいしそうだ」
 男はテーブルの前に座ると、わしに断りもなくムシャムシャと野菜炒めを食べ始めた。プシュッと缶ビールを開ける子気味いい音がする。
「おい、そいつはお隣さんがわしのために作ってくれた野菜炒めだ。勝手に食うな」
「広永さん、野菜炒めはまだまだあるから大丈夫よ。とりあえず飲みましょう。さあ、早くコップを出して!」

 お隣さんは、赤ら顔で熟睡している広永さんに布団と毛布をかけた。食器を片付け、掃除機をかけ、洗濯もして、部屋の隅々までピカピカにする。
 男が寝ている広永さんの横に座ると、お隣さんに話しかける。
「オヤジは相変わらずだなあ。ところで、お姉ちゃんはいつまでオヤジの面倒をみるんだい? 施設に入れたほうが楽だろ」
 ふふふ、と「お姉ちゃん」と呼ばれたお隣さんは笑う。
「これがお母さんの遺言だから、仕方がないじゃない。認知症が進んで、もう私たちを子供だとは認識していないけど、できるだけ思い出の詰まったこの部屋で過ごさせてあげたいなって。ちなみに、お父さんは、あんたを私の愛人だと思い込んでいるわよ」
 弟は肩をすくめた。
「けど、お父さんも、お隣さんのことが気になるのは元気な証拠。少しでも長生きしてもらわないと」
「それも、そうだな」
 姉弟は、あらためて二人で飲み始めた。家族の思い出話をしているうちに、時計は日付を越えようとしている。
 今度は父をどこに連れていこうか。思い出の公園か、それか川辺の散歩コースか。
 お隣さんはスマホで天気予報を開いた。明日の予報は、晴れだった。

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posted by 齊藤 想 at 21:00| Comment(0) | 自作ショートショート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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