2024年12月14日

【映画】丹下左善余話/百萬両の壺

キネマ旬報社が2009年に発表した日本映画オールタイム7位に入った名作時代劇です。


丹下左膳餘話 百萬両の壺 [DVD]

丹下左膳餘話 百萬両の壺 [DVD]

  • 出版社/メーカー: コスモコンテンツ
  • 発売日: 2011/02/14
  • メディア: DVD



1935年公開の映画です。
主人公は丹下佐善で、隻眼隻腕の凄腕剣士。時代劇のヒーローです。
監督の山中貞雄は戦前にわずか5年のキャリアで26本の時代劇映画を発表しましたが、戦争でわずか28歳で亡くなった伝説の人物です。
さて映画ですが、百万両の壺のありかが描かれたツボを巡る話です。
その壺は価値を知らなかった柳生本家から、江戸の剣術道場に婿養子として追い払われた次男に捨て銭のように渡され、その剣術道場でもゴミとして屑屋に売り払われます。
その屑屋は近所の子供に、金魚用に譲り渡します。
こんな感じで進むのですが、この子供が物語のキーになります。
丹下左膳は矢屋の居候ですが、矢屋での騒動で客の一人が闇討ちされてしまいます。
その客が壺を譲られた子供で、丹下左膳はひとりぼっちのその子供に父親が死んだと言えずにつれて帰ります。
この辺りのやり取りが傑作です。
矢屋の女将さんも、「子供なんて嫌い、早く追い出せ」といいながら、なんだかんだと子供を引き取り、かわいがります。
丹下左膳はいつ真実を言おうかと思っているのですが、子供が思わぬことを言って、結局言えません。
いやはや、笑ってしまいます。
お金に困った丹下左膳が道場破りをするのですが、その道場主が実は矢屋の常連で丹下左膳とも仲が良い。
まさに鉄板コメディです。
カメラワークも構成も考え抜かれており、現代にも通じる映像です。ラストはちゃんとタイムリミットも設定されています。
そして、結局、壺を売らないもの、その壺を売らない理由もしっかりしていて、奇麗なラストです。
このラストのために、伏線が引かれているのも分かります。
時代劇というと殺陣のイメージがありますが、本作では殺陣のシーンはごくわずかです。
とても昭和10年の作品とは思いません。山中監督が28歳で戦病死したのが本当に残念です。

現代にも通じる戦前の傑作時代劇を楽しみたいひとのために!
posted by 齊藤 想 at 21:00| Comment(0) | 映画評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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