2024年12月05日

【映画】鳥人

嵐山寛寿郎主演。日本で初めて空を飛んだ浮田幸吉を主人公にした映画です。

https://www.nikkatsu.com/movie/13839.html

公開年は1940年なので戦前(日中戦争の最中)です。
時は江戸中期。岡山藩に空を飛ぶ研究を続ける町人、香具師幸吉がいました。
回りからの嘲笑や、貧乏にも負けず、ついに夢を実現するまでの話です。
映画では豪快に空を飛んでいますが、史実では数メートル程度だったようです。
戦前の映画ってどんな感じだろう、と思いながら見たのですが、とてもよくできていました。
冒頭で幸吉が自殺しようとした浪人、源三郎を救うシーンから始まるのですが、この源三郎のキャラが良いです。
もちろん一善の飯にありつくために幸吉宅に居候するわけですが、彼が徐々に幸吉に惹かれていくことで、間接的に幸吉の人格を表現します。
ただ、こうした陽の部分だけでなく陰もあります。
源三郎は幸吉の身代わりに空を飛び、墜落死します。
息子は、父の研究のせいでいじめられますし、さらに病気の子供を救えずに死なせてしまいます。
子供の死を通じて、研究が進まず貧乏生活の辛さを表現します。
途中でライバルが登場します。敵は内部(貧乏、研究の困難さ)だけでなく外部にも設定されているとところが工夫です。
ライバルは家老の息子で幸吉の研究を奪おうと策謀しますが、逆にスパイが幸吉の味方になります。
と思いきや、ラストで一番の身内に裏切者がいたことが判明したりして、こうしたドンデン返しもしかけられています。
終盤で幸吉がキリスト教徒と疑われて逮捕されそうになります。もちろん、家老の息子もからんでいます。
これがタイムリミットの効果を産み出し、味方が防いでいる間に幸吉は飛び立ちます。
ちなみに長いタイムリミットとして貧乏で追い詰められる幸吉という設定もあります。ダブルのタイムリミットです。
たしかに演出や演技は、まるで舞台を映しているかのようだし、カメラワークもほとんどないという時代的制約はあります。
けど、脚本で使われている技術は現代にも通じるものがあり、予想以上の近代っぷりに驚きました。
かなり史実は無視していますが、なかなかよい映画だと思います。

浮田幸吉の熱い人生を体験したいひとのために!
posted by 齊藤 想 at 21:00| Comment(0) | 映画評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください