2024年02月11日

【映画】善き人のためのソナタ

アカデミー賞外国語映画賞を初めてとして、受賞歴多数の隠れた名作です。


善き人のためのソナタ [Blu-ray]

善き人のためのソナタ [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: ギャガ
  • 発売日: 2023/02/03
  • メディア: Blu-ray



舞台はベルリンの壁崩壊を間近に控えた1984年の東ドイツです。
東ドイツには悪名高い国家保安局があり、国民を厳しく監視していました。
主人公は敏腕局員のヴィースラー大尉です。
彼は反体制の疑いのある劇作家ドライマンと、恋人の女優クリスタの監視を命じられます。
ドライマンとクリスタは自由を求めています。
対するヴィースラーは国家に忠誠を誓いながらも、疑問と孤独を深めていきます。
ドライマンが恋人とセックスを楽しむのを聞いて、ヴィースラーはコールガールを呼びますが、当然ながら心の渇きは癒されません。
いつしかヴィースラーは報告書に手心を加えて、ドライマンをかばおうとします。
西ドイツで東ドイツの自殺者統計に関する記事が発表されます。
国家保安局は執筆者としてドライマンに疑いの目を向け、ヴィースラーは危機に陥ります。
国家保安局はドライマンの恋人を逮捕し、ヴィースラーに尋問させます。ヴィースラーは彼女から証拠となるタイプライターの隠し場所を吐かせます。
そして国家保安局はドライマンのアパートへと向かいます。
という感じの話です。
当時の東ドイツの雰囲気がよくでている作品だと思います。
東側諸国では優等生の東ドイツですが、その体制は抑圧的で、国民は自由を求めています。
主人公は国家に忠誠を誓いながらも、疑問を感じ、クールな表情とは裏腹に心情はゆれ続けます。
そして自由を求める彼らにあこがれの気持ちが芽生えます。
そうした気持ちの揺れがよくでている映画です。
前半はヴィースラーがドライマンをどう扱うかでドキドキして、後半は危機に陥ったドライマンをヴィースラーがどう救うかでドキドキします。
この分岐点は、ドライマンが上司に呼び出されたシーンで、ここがミッドポイントにあたると思います。
プロローグはベルリンの壁が崩壊したあとになります。
ドライマンが新作を出版し、ヴィースラーは購入するのですが、店員から「ギフト用ですか?」と聞かれて
「これは私のための本だ」
という返答がダブルミーイングで、決まっています。
製作費2百万ドルと低予算ですが、興行収入77百万ドルと38倍も稼ぎました。
主演のウルリッヒ・ミューエは東ドイツ出身ですが、映画公開の翌年に54歳で急逝しました。胃癌だそうです。ご冥福をお祈り申し上げます。

東ドイツを舞台にした名作映画を楽しみたいひとのために!
posted by 齊藤 想 at 21:00| Comment(0) | 映画評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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