2025年09月06日

【書評】クリス・カイル『アメリカン・スナイパー』

イラク戦争に四度従軍した伝説的スナイパーの自伝です。

アメリカン・スナイパー

アメリカン・スナイパー

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2015/02/20
  • メディア: Kindle版


本作は映画『アメリカン・スナイパー』の原作です。
クリス・カイルは米軍歴代トップレコードで、伝説の狙撃手と言われています。
とにかく戦場の姿が生々しいです。建物に隠れ、よい狙撃地点を確保し、ひたすら監視する。交戦規定に基づき、銃などの武器を持った相手を狙撃する。
いかに撃つかより、いかに決断するか、が重要だと思わされます。何度か「交戦規定に違反した」として、拘束され尋問を受けています。
いつ殺されるかわからない戦場でも、バカみたいな交戦規定を守らないといけない。そうした憤懣がときおり表に出ます。
通読して、生きるか死ぬかの戦場にいる兵士としての心情が細かく描かれていると感じます。とにかくリアルです。
敵を射殺することをゲームのように競い合う。新人兵士に対する過酷ないじめ(というより暴行)。野蛮人を殺したことで初めて平和になるとの確信。反戦運動への怒り。戦争にいくだびに、悪化する妻と関係。
奇麗ごとは書かれていません。
この本を読むと、現場を知らずに空論で軍事を語ることを無意味さを感じます。
ときおり挟まれる妻の述会も、カイルの心情を示すアクセントになっています。
非常に印象に残ったのが、変な話ですが、新人いじめです。
旧日本軍でも新人に対するいじめがあったことは周知の事実ですが、文化も時代も違うのに共通するということは、どこか人間の本能に根差しているのかもしれません。
また反戦運動に対する怒りでは「派遣を決定した政治家に抗議すべきだ」というのは正論です。
激しい戦闘が続き、肉体はむしばまれ、最後の派遣では銃弾が2発も命中します。防弾ベストやヘルメットに守られて命を落とすことはなかったものの、無敵ではないことを痛感します。
この本を著して1年後に、カイルはPTSDを患っていた元兵士に射殺されます。

現代におけるリアルなスナイパーを知りたいひとのために!
posted by 齊藤 想 at 12:00| Comment(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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