2025年07月01日

【書評】亀田利和『観応の擾乱』

観応の擾乱とは、室町幕府創設期における足利兄弟の壮大なる兄弟喧嘩です。

観応の擾乱 室町幕府を二つに裂いた足利尊氏・直義兄弟の戦い (中公新書)

観応の擾乱 室町幕府を二つに裂いた足利尊氏・直義兄弟の戦い (中公新書)

  • 作者: 亀田俊和
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2019/02/08
  • メディア: Kindle版


室町幕府の創設者は足利尊氏ですが、行政は同母弟の足利直義が実行するといった二頭体制で進んでいました。
ところが軍事系の足利尊氏ラインに属する高師直と、行政系の足利直義との対立が先鋭化し、ついに衝突したのが観応の擾乱です。
複雑化したのは、この争いに、各地の利権争いや南北朝の争いが加わったことです。
ざっくり書くと最初は直義派に味方が集まり、尊氏=師直ラインを圧倒し、高師直を殺害することに成功します。
ところが尊氏は戦いに負けた後も恩賞を与える権利を維持し、直義が味方に十分な恩賞を与えなかったこともあり、直義は一気に劣勢に。
何もしないのに(何もしていないから?)没落という奇妙な現象が起こります。
直義は関東に逃れ、そこでも敗北し、直義の急死によって終わります。
その後も直義の養子である直冬(尊氏の実子だが、極端に嫌われていた)が暴れます。それも鎮圧されて足利幕府の体制は固まります。
この観応の擾乱に絞った新書ですが、とにかく利権争いで各地の豪族が集合離散を繰り返したためかなり難解です。
昨日の敵は今日の友で、明日は再び敵になるなんて状況はざらです。
著者のまとめとしては、直義は尊氏を打倒する気持ちはなく、全般的に消極的。さらに直義は金属疲労を起こしていた鎌倉幕府体制に戻そうとして失敗した、というところだと思います。
足利尊氏は前面に出るタイプではありませんが、観応の擾乱に対しては最前線に立ち、様々な指示を出して、自ら解決に動きます。
仲良し兄弟の運命を分けたのは、物事に対する気概と、目指すところがあるのかなないのかの差なのかなと思いました。
マイナーな事件なので需要は限られそうですが、こうした新書が出版されるのは嬉しい限りです。

室町幕府初期の大事件を知りたいひとのために!
posted by 齊藤 想 at 12:00| Comment(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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