2025年02月06日

【書評】中野京子『怖い絵 泣く女編』

絵に秘められた物語を語り掛けてくれる本です。


怖い絵 泣く女篇 (角川文庫)

怖い絵 泣く女篇 (角川文庫)

  • 作者: 中野 京子
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2020/04/25
  • メディア: Kindle版



22作品が紹介されています。
エッシャー『相対性』(永久に水車が回る『滝』が一番有名)のように、見た瞬間に奇妙さが理解できる絵画もありますが、説明を読んでやっと意味が分かる作品もあります。
一番印象に残ったのはカレーニョ・デ・ミランダ『カルロスⅡ世』です。
少年王の肖像画ですが、見た瞬間に普通ではないことが分かります。極端にやせ細った体に知性を失った視線。カルロス二世は近親婚の弊害と思われる様々な障害を持って生まれた子供で、もちろん美化はされているはずですが、それでも絵に痕跡が認められます。
ドラローシェ『レディ・ジェーン・グレイの処刑』もインパクトがあります。ジェーン・グレイは王位継承権を持っていただけに、周りの陰謀に巻き込まれ、本人のあずかり知らぬとことで瞬間的に王位に担ぎ上げられて、結果として処刑されてしまいます。
彼女の悲劇を知ると、絵の味わいが変わってきます。
有名な贋作であるメーヘレン『エマオの晩餐』もあります。
様々な歴史のうんちくが散りばめられているので、歴史好きにはたまりません。

絵画と歴史が好きなひとのために!
posted by 齊藤 想 at 12:00| Comment(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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