2024年11月16日

【書評】原為一『帝国海軍の最後』

開戦から終戦まで最前線で戦い続けた海軍軍人の回想録です。


帝国海軍の最後 (KAWADEルネサンス)

帝国海軍の最後 (KAWADEルネサンス)

  • 作者: 原 為一
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2011/07/09
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



原大佐は1900年生まれです。
開戦時は駆逐艦天津風艦長、そこから駆逐隊司令としなり、陸上勤務を挟んで巡洋艦矢矧艦長として戦艦大和の沖縄特攻に同行します。
著者は最前線の駆逐艦艦長として、主要な海戦だけでなく様々な輸送任務にも従事しています。
準備と警戒を怠らない艦長だったようで、幾多の死線を切り抜けています。「時雨」は雪風と並ぶ幸運艦と呼ばれていましたが、雪風と同じく、与えらえた条件の中で全力を尽くした結果かと思われます。
必然の幸運だったと思います。
本書にはときおり戦時中の本音がでています。
ソロモン海戦のころには敗戦を予感していたこと。ラバウルで戦争などどこふく風の現地住民の踊りを見ながら「血を流して、とったりとられたりして、結局なんにもならないばかげたことをやめて(中略)平和的に発展していく道はないものだろうか。少なくとも戦争に傾注するだけの決死的労力と資材を投入して」などと述懐しています。
戦争が終わったときも「3年遅い」と感じています。
リアルな描写が続きますが、著者がその目で見た戦果確認と、戦後の結果を突き合わせるとかなりの齟齬があり、戦場における現状把握の難しさを感じます。
戦後まもなくに書かれただけに記憶も鮮明で、古典として残る名著だと思います。

太平洋戦争の最前線で戦い続けた艦長の回想録を読みたい人のために!
posted by 齊藤 想 at 12:00| Comment(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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