2024年07月23日

【書評】川又千秋『反在士の鏡』

古き良きSFの香りが満載です。


反在士の鏡

反在士の鏡

  • 作者: 川又 千秋
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2021/09/08
  • メディア: 単行本



ストーリーとしては、鏡をくぐりぬけて宇宙空間をワープする「アリス・ドライブ」が一般化された世界における、二大勢力の不毛な戦いを描きます。
解説で「SFは通俗的なものに慣れている」と書かれていますが、そういう意味で、本書は通俗的なSFのど真ん中です。
冒頭でかっこよくラインオンと名付けられた戦士が登場しますが、このあたりは西部劇のノリです。
主人公は金次第でどちらがわにも雇われる傭兵で、これまたハードボイルド臭がします。
SFの形を取った、古くからよくある物語のパターンです。
反在士は鏡を通じていろいろな場所にいけるのですが、鏡に映る虚像との入れ替わり、さてどちらが虚像で実像なのか分からなくなり……というのもよくありそうです。
ストレートな作品ですが、近年の複雑怪奇なSFとは違い、とても読みやすいです。
文庫版の初版が昭和56年です。
その頃のSFを満喫できる作品です。

エンターテイメント的なSFを堪能したいひとのために!
posted by 齊藤 想 at 12:00| Comment(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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