2025年04月20日

【映画】クーリエ/最高機密の運び屋

セールスマンがスパイになるウソのような本当の話が元になっています。

クーリエ:最高機密の運び屋[Blu-ray]

クーリエ:最高機密の運び屋[Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: Happinet
  • 発売日: 2022/01/21
  • メディア: Blu-ray


主人公は東欧で工業機械のセールスをするウィンです。
そのとき、ソ連のペンコフスキー大佐が米国への亡命と引き換えに情報提供を申し出てきました。
米国はソ連政府内部のスパイを失った直後だったので、英国に協力の打診があり、そこでMI6は民間人を情報運び屋にすることを思いつきます。
そこでスカウトされたのがウィンです。
彼は工業機械のセールスのかたわら、ペンコフスキーと接触し、情報を受け取り続けます。
当時は米ソ冷戦の真っただ中にあり、キューバ危機の直前です。
ペンコフスキー大佐の情報によりキューバ国内のミサイル基地が発見され、米国がソ連に圧力をかけることでキューバ危機は回避されます。
しかし、米国内スパイがソ連情報の量と質から疑念を抱き、ついにペンコフスキー大佐の身に危険が迫ります。
この辺りの描写が、もう、サスペンスといった感じで、じわじわと恐怖を煽ります。
結局、ペンコフスキーは亡命直前に逮捕され、ウィンも飛行機から引きずり降ろされます。
ペンコフスキーは処刑されますが、その前にウィンからキューバ危機は回避されことを伝えられ、自分の行動は無駄ではなかったことを知ります。
ウィンはソ連スパイとの交換で解放され、英国に戻ります。
とても面白い映画です。実際のところ、ペンコフスキーが亡命を希望した理由は不明です。
ですが、キューバ危機を救った一助になったことを強調し、そこを中心に映画をまとめているため一本筋の通ったストーリーになっています。
少し家族間の話はありますが、基本的にサブストーリーはそぎ落とし、スパイ活動が中心というドキドキ感で観客を引っ張ります。書類の受け渡し方法も工夫し、盗聴を恐れたりして、とても生々しいです。
こうした描写が、じわじわと迫りくる心理的恐怖に繋がっていると思います。
神は細部に宿るです。
とてもよい映画でしたが、テーマがマイナーだったためか、興行収入は15百万ドルに留まりました。
評論家の評価は比較的高めです。

米ソ冷戦時代のスパイの話を楽しみたいひとのために!
posted by 齊藤 想 at 12:00| Comment(0) | 映画評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【書評】中野京子『フェルメールとオランダ黄金時代』

フェルメールを中心とするオランダ黄金時代の絵画を紹介です。


中野京子と読み解く フェルメールとオランダ黄金時代

中野京子と読み解く フェルメールとオランダ黄金時代

  • 作者: 中野 京子
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2022/05/26
  • メディア: 単行本
\

2022年2~4月に上野にある東京都美術館で「フェルメールと17世紀オランダ絵画展」が開催されました。
その絵画展に合わせて出版されたのかな、と思います。
オランダ絵画といえば、フェルメールとレンブランドの知名度が圧倒的かと思います。
フェルメール『真珠の耳飾りの少女』『牛乳を注ぐ女』、レンブランド『夜警』『チュプル博士の解剖学講義』といった有名作はもちろんのこと、本書では日本ではあまり知られていない作家、作品も取り上げています。

個人的に印象に残ったのは、ロンギ『サイのクララ』です。
1751年作ですが、まるでフレスコ画のようなのっぺりとした絵ですが、当時の見世物小屋の様子がよくわかります。
なにより、この時代にサイがヨーロッパにいて、こうして観客を楽しませていたことに驚きです。
チューリップバブルも取り上げられていて、あの有名なブリューゲルの孫、ブリューゲルⅡ世『チューリップ・マニア』も取り上げられています。
ボロンヒヤ『花の静物画』では、実際に高値で取引された鮮やかな縞模様のチューリップ(モザイクウィルスに感染した球根から生じる。)が絵が描かれています。
いまでは絶滅した品種です。ちなみに品種名は『センペル アウグストゥス』で、当時ですら12株しかなかったそうです。

オランダ絵画とともに、オランダ黄金時代の様子を知りたいひとのために!
posted by 齊藤 想 at 12:00| Comment(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする