2025年03月10日

【掌編】齊藤想『マーモット』(ChatGPT_92点)

第28回伊豆文学賞に応募した作品その2です。
マーモットは大型のネズミで、食欲旺盛で、警戒心が薄く、両手でせんべいを持って食べる姿はなんともかわいらしいです。
このマーモットを日本で見られるのは「伊豆サボテン公園」だけです。
ここからどう話を作るかですが……
ということで、具体的な技法はこちらの無料ニュースレターで紹介します。次回は4/5発行です。



・基本的に月2回発行(5日、20日※こちらはバックナンバー)。
・新規登録の特典のアイデア発想のオリジナルシート(キーワード法、物語改造法)つき!

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『マーモット』 齊藤 想

 札幌の街に、粉雪がちらつき始めた。
 誕生日のディナーは、哲也の心無いひとことで台無しになった。前菜のサラダを食べている恵梨香に向かって、笑いながら、こういい放ったのだ。
「その食べっぷり、まるでマーモットみたいだね」
 マーモットなら知っている。ネズミの仲間で、出っ歯で、太っていて、極端に食い意地が張っている。だから、エサをチラつかせるだけで簡単に捕まえることができる。
 女性に向けていい言葉ではない。相手が大切なひとなら、なおさらだ。
 恵梨香は、フォークを平皿の上に置いた。
「マーモットで悪かったわね」
「気分を害したのなら謝るよ」
 哲也は何が悪いの、という感じで笑っている。ここまでデリカシーのない男性だとは思わなかった。恵梨香は落胆した。
「ごめん、食べる気がなくなった。もう帰るね。さようなら」
「どうしたんだよ、ちょっと待てよ。このお店予約するの大変だったんだぜ」
「それなら哲也が食べなさいよ。哲也が大好きなマーモットのように」
 恵梨香はテーブルにひとり分の代金を置くと、振り返ることなく店から飛び出した。

 路上で、恵梨香はショーウィンドウに写る姿に肩を落とした。マーモットのような出っ歯、マーモットのような下腹、さらにはマーモットのような旺盛な食欲に、休日にはマーモットの冬眠のような惰眠。
 確かに恵梨香はマーモット。容姿も性格も生活習慣も全てがだらしない。
 対する彼氏は真面目な会社員だ。知り合ったきっかけは地元の動物園だ。売店でバイトをしていたところ、ナンパ目的の大学生グループがやってきた。
 もちろん恵梨香が目当てではない。バイトの同僚に、アイドルと見間違うようなかわいい子がいた。大学生たちは、その子の気を引こうと必死になっていた。
 大学生たちが、その子にグループで遊びに行こうと持ち掛けているときに、恵梨香にそっとメールアドレスを渡してきたのが、いまの彼氏の哲也だ。
 恋愛には縁のない人生だとあきらめていた恵梨香は有頂天になった。哲也は見た目はぱっとしないし、服装のセンスも悪い。哲也はグループ内の引き立て役であり、人数合わせに過ぎないことは明らかだった。
 だからこそ、哲也は同じ匂いを感じる恵梨香にアタックをかけたのかもしれない。ものの見事な、負け犬同士の組合せ。
 それでも、恵梨香はかまわなかった。恋愛をしていることに酔っていた。
 そして、今日は交際三年目のディナー。プロポーズの期待は見事に裏切られた。
 少しは別れの予感があった。
 二人とも社会人になり、哲也は一流商社に入社してビジネスの最前線で活躍している。対する恵梨香は、地元企業でアルバイトの延長のような事務作業を続けている。哲也の会話についていけないことも増えた。
 それに、交際三年目なのに一度も体の関係がない。泊りがけの旅行すらない。哲也は恵梨香のことを肉体関係を持ったらめんどくさい女と思っているのかもしれない。
 だから、遠回しに恵梨香を傷つけて、交際を自然消滅させようとしている。学生時代は二人とも負け犬。だけど、いまは二人の立場に埋めようのない格差が生じている。
 恵梨香は店の外で泣いた。いつか、こうなることは分かっていたはずなのに。私は負け犬。いや、負けマーモットか。
 路上で泣いている恵梨香に、哲也が追いついてきた。
「急にどうしたんだよ。本当に深い意味はなかったんだよ。ただ、単純にマーモットが可愛いと思っていただけなのに」
「気休めなんていらないわよ。だって、マーモットのどこが可愛いのよ」
「そりゃ人懐っこいし、仲間思いだし、それに大家族でいつも楽しそうだし。ぼくと恵梨香も、そうなれればいいなと思って」
「えっ、それってどういうこと?」
 恵梨香は顔を上げた。哲也はどこか恥ずかしそうな顔をしている。
「ところで、恵梨香は日本でマーモットを見られるのは伊豆サボテン公園だけと知ってる? 一度、行きたいと思うんだよね」
「ここは札幌よ。日帰りは無理よね」
「だから二人で一泊してさ。二人で温泉でもゆっくりと入って、それからいろいろな話をして……。もちろん休暇を合わせてさ」
 言葉の端から、少しおどけた表情から、哲也の愛情が溢れてくる。恵梨香は泣いた。今度は別の意味で。
「私、これからもマーモットでいるから」
 恵梨香は哲也の胸に飛び込んだ。哲也の胸は、心地よく温かかった。

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posted by 齊藤 想 at 21:00| Comment(0) | 自作ショートショート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

最近の金融・投資【令和7年3月第2週】

〔先週の株式市場〕
自分の保有株は、2日プラスで2日マイナス。
値動きが大きくて、どーんとプラスのあとはどーんとマイナス。
けどおなじどーんでもプラスのほうがやや大きく、トータルだとそこそこプラス。
同じどーんならマイナスの方が大きいのがパターンなんですけどね。
先週は珍しいということで。

〔カネミツからクオカードが届いた話〕
だいぶ昔の話です。カネミツは関西地方の自動車部品メーカーです。
有名企業ではありませんが、技術力がありそうだし、配当も10年連続増配の優良企業です。
自分はいまより少し株価が安い時期に購入したので、ぼちぼちの含み益があります。
そんなカネミツの株主優待はクオカードです。
花柄のカードでギフト用の一般絵柄ですね。
アピールのチャンスなので、自社製品をプリントしてもいいんじゃないかとも思いますが、経費の問題ですかね。
独自クオカードの費用がどのくらいのか分かりませんが。
posted by 齊藤 想 at 12:00| Comment(0) | 金融・投資 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする