2025年03月03日

【掌編】齊藤想『仇討ち温泉』(ChatGPT_88点)

第28回伊豆文学賞に応募した作品その1です。ミステリ仕立ての時代劇にチャレンジです。
ベースになったのは、山本周五郎の短編『ひとごろし』です。弱い侍がやむなく仇討に出る話で、仇とまともに戦っては勝てないので、遠くから「ひとごろしだ~」と言い続けて、仇を精神的にまいらせるというストーリーです。
この短編ですが、ラストがまだ素晴らしいです。
本作は山本周五郎作品の主人公を写し取りながら、ストーリーを変更しています。

ということで、具体的な技法はこちらの無料ニュースレターで紹介します。次回は3/5発行です。
※本作の解説は4/5発行のメルマガで紹介します。



・基本的に月2回発行(5日、20日※こちらはバックナンバー)。
・新規登録の特典のアイデア発想のオリジナルシート(キーワード法、物語改造法)つき!

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 『仇討ち温泉』 齊藤 想

 こんなに賑やかな温泉地で、親の仇に会うとは思いもしなかった。赤堀三之亟は湯煙の向こう側から近づいてくる大柄な男性に気がつくと、慌てて湯船に沈み込んだ。
 こんなはずではなかった。
 仇討ちといっても、三之亟が望んだことではない。三之亟の父親は酒乱で、たびたび刃傷沙汰を起していた。
 父親の死因もあっけない。旅先で酒乱仲間と騒ぎ続け、路地を右に行くか左に行くかというどうでもいいことで口論となり、斬り合いに発展した。旅先ということもあり、死体は戻ってこなかった。
 父親から愛された記憶のない三之亟としては、清々したというところだが、困ったことに下手人が行方をくらましてしまった。
 おかげで会う人々に「いつ仇討ちにいくのか」と聞かれ続ける始末。
 赤堀家は代々勘定方を勤めている。三之亟の得意技はもちろんそろばんで、剣術はからっきしダメだ。体の調子が悪いとか、大事なお役目があるとか、下手人の行方が分からないからとごまかし続けていたが、興味本位の殿様まで乗り出してきた。
「三之亟の仇討ちのために、なんとしても下手人を探し出せ」
 殿様の一喝に、家中のだれがも下手人探しにやっきになった。
 まさにありがた迷惑だ。
 とはいえ日本は広い。そう簡単には見つからないだろう。そう高を括っていたら、ひと月もしないうちに下手人が発見された。
「下手人は刀傷を負い、伊東温泉で湯治をしている模様です」
 殿様は大興奮だ。
「父の仇討ちを果たせば、わが藩にとって名誉なことである。成功を祈っているぞ」
 三之亟は多額な金銭を下賜され、おまけに出陣式まで開催されてしまった。
 こうなると後には引けない。
 三之亟は仕方なく藩を後にした。東海道をゆっくりと下り、小田原宿から伊豆方面に分岐してからも頻繁に休む。
 ここまで時間をかければ、さすがに下手人も逃げているだろう。殿様からの下賜金で温泉を楽しみ、名物を食べ、七福神巡りを楽しんでから帰国しよう。
 最後の仕上げに温泉と思っていたら、親の仇が裸で現れたのだ。しかも下手人はわざわざ三之亟に近づいてくる。
「そこにいるのは三之亟ではないか。こんなところで会うとは奇遇だなあ。三之亟も湯治にきたのか」
 奇遇も何も、仇討ちのためにここまで来たのだが。男は陽気に話し続ける。
「三之亟の父上はお酒だけでなく温泉も好きでなあ、よく近隣の温泉を泊まり歩いたものだ。そのあげくに、強い温泉に長湯しすぎて湯あたりして重体になって」
 そんなこともあったのか。三之亟は父の酒乱を嫌い、交流を避けてきた。親不孝だったと、後悔の念が浮かぶ。
「最後の言葉は、柔らかな伊東温泉にすればよかった……だ。父上らしい最後だよな」
「ちょっと待て。父は口論の末に切り殺されたのではないのか」
「だれがそんなことを」
 親の仇は目を白黒させている。
「はあ、分かったぞ。三之亟は赤堀家が握っている勘定方を奪おうとする悪人に騙されたのだ。なにしろ、勘定方は才覚一つで利得が大きいからな」
「父は酒乱かもしれないが、そんな薄汚れた人間ではない。無礼なこと言うな。この場で叩き斬るぞ」
「ひとの話は最後まで聞け。父上がたまたま旅先で死んだことをいいことに、藩内にあることないことを吹聴し、仇討ちを名目に息子まで追い出そうとする悪人がいるのだ」
「そなたの言説には証拠がない」
「三之亟は本当に父上から何も聞いていないのか。いままで父上は何度も暴漢に襲われたのだぞ。すぐに旅に出るのも、暴漢から身を隠すためだったのに」
 三之亟の頭の中で、全てが繋がった。

 帰国した三之亟は、殿様に言上した
「ただいま親の仇を討ってまいりました。これがその証拠でございます」
 三之亟は手にしていた壺の中身を、殿様自慢の庭園にぶちまけた。中には父が湯あたりした温泉が入っている。
「殿様にお願いがあります。父と人傷沙汰があった相手をお調べください。父を襲うように命じた者がいるはずです。本当の仇は別にいます。真の仇が判明次第、いますぐこの手で成敗いたします」
 そう告げると、殿様は困った顔をした。
 本当の仇を討てないのが、三之亟には何より心苦しかった。

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最近の金融・投資【令和7年3月第1週】

〔先週の株式市場〕
2日プラスで2日マイナス。
プラスは小さくマイナスは大きくなので、週トータルではそこそこマイナス。
月トータルもマイナスに沈没です。
そろそろ買おうかどうか悩んでいたのですが、ステイにして正解だったかも。
もっとも単なる偶然ですが。

〔オリックスの株主優待が届いた話〕
だいぶ昔の話です。今回が最後の株主優待。
昨年は有機野菜のジュースとゼリーのセットにした気がする。
最後は何を選ぶかですが、ちょっと悩みつつ、マグロ丼の素にする。
5種類×3個=15個入りで、多種多様なマグロ丼というのがちょっと珍しいかなと思いまして。
株主優待は日常では買わない商品を選ぶのが、マイルールです。
さて、届いたマグロ丼のセットですが、冷凍パックになっていて、流水で解凍するタイプです。5種類×3個ですが、1パックが小さいので1人前には2パックを使う感じかな。
冷凍とは思えないほど美味しいです。
これは当たりかもしれませんが、残念ながら今回で最後。
他の株主優待で同じ商品を見つけたらポチっとします。はい。
posted by 齊藤 想 at 12:00| Comment(0) | 金融・投資 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする