2025年02月16日

第74期王将戦第4局(藤井聡太王将VS永瀬拓矢九段)

藤井王将の3連勝で迎えた第4局です。

〔中継サイト〕
https://mainichi.jp/oshosen2025

藤井王将は昨年度の王将戦でフィットネスバイクを贈られています。
インタビューで使用状況を聞かれて「1日1回は漕いでいていい運動になっているのかな」と答えています。真面目さというか人柄がにじみ出るやり取りだと思います。
藤井王将は正座への負担を考えると、体重を減らしたいと考えているようです。渡辺九段も長年の正座の影響で膝の手術をしていますし、ある意味では職業病です。
囲碁界では椅子対局が普通ですが、将棋界では特例扱いです。
伝統芸能の面もあるので一概には言えませんが、棋士への負担を考えると、椅子対局を増やしてもいいのかもしれません。

〔棋譜〕
https://mainichi.jp/oshosen2025/250215.html

ということで将棋です。
藤井王将の先手で角換わりとなりました。
いかにも指定局面といった手順で進みますが、44手目の3一玉が永瀬九段の用意していた研究手です。
局面は互角でも、藤井王将の時間が削られていくのに対して、永瀬九段はどんどん指していきます。
この時間差は大きいです。
永瀬九段が初めて長考したのは64手目。さらに66手目も連続長考です。消費時間も急接近です。
2日目も互角が続きますが、徐々に評価値は先手に振れ始めます。
勝負の分かれ目は、93手目でした。
ここで4二銀から4七香打とすれば先手有利だったようですが、銀が質駒になるのはいかにも怖い。
長考の末に3四銀と打ちましたが、3三歩からの永瀬九段の受けが見事でした。
藤井王将の詰めろが途切れた瞬間に襲い掛かり、124手まで永瀬九段の勝利。これでシリーズ初勝利を上げました。

第5局は3月8日(土)、9日(日)に、埼玉県深谷市の旧渋沢邸「中の家(なかんち)」で行われます!
posted by 齊藤 想 at 22:13| Comment(0) | 将棋 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【映画】ノア/約束の舟

ノアの箱舟をモチーフとしたファンタジー映画です。


ノア 約束の舟 [Blu-ray]

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  • 出版社/メーカー: パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
  • 発売日: 2015/01/28
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ノアの箱舟は旧約聖書・創世記の物語です。
主は地上に増えた人々の堕落を見て、洪水で滅ぼすことを決めた。神は動物たちを救うために心正しいノアに箱舟の建設を命令し、動物ひとつがいずつ収納した。
洪水が引き、ノアたちは箱舟を出て新しい世界を築き始める。
神は全ての生物を絶滅させてしまうような大洪水は二度と起こさないことを約束する。
という感じです。
さて映画はラッセルクロウ演じるノアが主人公です。
主人公は神からの命令に従い、箱舟を作り、堕落した人類は滅亡させると決意します。
動物はつがいで載せますが、人類は家族のみ。しかも長男の嫁として選んだのは、子供を産めない女性です。次男三男は嫁取りすら考えません。
ノアはゴーレムたちと箱舟を作りますが、敵対する蛮族が妨害します。これがものすごい大軍勢でおまけに火薬も使います。鉄器も用います。
時代背景が混乱しますが、ファンタジーですから。
ノアが大暴れしている途中で洪水が起きて、箱舟は浮かびます。
ここで子供が産めないはずの嫁が妊娠します。
ノアは女が生まれたら殺すと決めますが、双子の女の子が産まれます。
しかし、ノアは双子を殺せず、神に許しを請います。
で、神に許されて箱舟は大地にたどり着き、新しい生活が始まります。
映画はこんな感じですが、日本人的には微妙かも。
ノアは心正しきものではなく、使命を果たすと思われたから選ばれたという設定です。そうでもしないと、殺人が正当化できませんからね。
映画のテーマとしてはノアの改心かと思いますが、神から縁遠い人間には、そこまでして神のお告げに従う意味がちょっと分からないといいますか。
自分の感想としては、カトリック教会からの批判「「創造主」が非ペルソナ的な、馬鹿げた命令を出す存在として描かれている事にも否定的見解が出されている」に近いかな。
主人公が極端すぎて、自分としては感情移入ができませんでした。
批評家からの比較的高評価とは反対に、2014年度(第35回)ラジー賞においては最低監督賞、最低スクリーンコンボ賞、最低脚本賞、最低リメイク・盗作・続編賞の4部門でノミネート候補リストに入っています。そんな感じかな、という気がします。
製作費1億25百万ドルに対して興行収入3億63百万ドルは成功でしょうか。

ノアの箱舟をモチーフとした映画を見たいひとのために!
posted by 齊藤 想 at 21:00| Comment(0) | 映画評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【書評】中野京子『名画の謎 旧約・新約聖書編』

中野京子による軽妙な絵画エッセイ、聖書編です。


名画の謎 旧約・新約聖書篇 (文春文庫)

名画の謎 旧約・新約聖書篇 (文春文庫)

  • 作者: 中野 京子
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2018/08/03
  • メディア: Kindle版



紹介されているのは30作品です。
作品の背景となる聖書の物語がふんだんに記述されているので、自然とキリスト世界にも詳しくなります。
それにしても、中野氏の筆は容赦がないです。
「異教徒である」と明言しているかもしれませんが、アブラハムの非道さに言及すれば、天地創造の矛盾も指摘します。
とはいえ、ユーモアたっぷりの口調なので、異教徒としては面白いです。
キリスト教徒からは怒られるかもしれませんが。
有名な『バベルの塔』の作者がブリューゲルであることを初めて知りました。
カラバッジョ『キリストの召命』の明暗の鮮やかさは素晴らしいです。
ボッティチェリ『東方三博士の礼拝』はパトロンたちを登場させていますが、当時の集合写真の意味合い(しかも有名人との!)があったそうです。
ティッチアーノ『悔悛するグラダナのマリア』は、美しい金髪で体を隠しているような隠していないような感じで、とてもエロイです。
たぶん、それが目的なんだろうなあと思ったり。

聖書にまつわる絵画を楽しみたいひとのために!
posted by 齊藤 想 at 12:00| Comment(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする