2025年02月13日

【映画】第9地区

マイナーながら、アカデミー賞4部門ノミネートの佳作です。


第9地区 [Blu-ray]

第9地区 [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • 発売日: 2011/04/21
  • メディア: Blu-ray



舞台は南アフリカ最大の都市、ヨハネスブルグです。
その上空にエイリアンが乗る宇宙船が現れます。
この宇宙船は遭難しているらしく、地球人が宇宙人に手を差し伸べ、彼らを特定の居住区に住まわせることになります。
彼らはその姿からエビと呼ばれ、文化を理解せず、野良犬のような生活をしているので人間から忌み嫌われています。
主人公のヴィカスは傭兵会社の役員です。社長の身内であることから現場リーダーに抜擢され、宇宙人を第9地区から第10地区に強制移住させるチームのリーダーに選ばれます。
しかし、ある液体を浴びたことこで体が宇宙人化していきます。
特殊な例なので研究用に傭兵会社から追われることになります。
そうした中で、宇宙人のリーダーと出会います。
主人公が浴びた液体は実は宇宙船用の燃料で、その燃料があれば母船に戻って主人公の体を治せます。
それを聞いた主人公は、宇宙人のリーダーとともに、会社にある液体を取り戻そうとします。
という感じの映画です。
映画は関係者のインタビューで始まります。そこから傭兵会社の記録用映像に移り、主人公の調子の良さと、ときおり漏れる裏面である身勝手な様子が流れます。
この辺り、人間がしっかり描かれています。
設定の妙もありますし、映像の妙もありますが、なにより登場人物を絞っているのが素晴らしいです。
余計なサブプロットもほとんどなく、途中で登場するギャング集団は何度もストーリーを出入りして、彼らという素材をストーリーとして完全に使い切ります。
ずっと身勝手な行動を続ける主人公ですが、仲間思いの宇宙人のリーダーの心にほだされ、最後は自らを捨ててまでリーダーの味方になります。
心優しい宇宙人リーダーですが、子供の存在が、彼のキャラを引き立てるのに役立っています。
また、この子供がストーリー上も重要な役目があるのも良いです。
本当にこの映画には無駄がありません。
ラストもとてもいいです。完全にエイリアン化した主人公が、鉄の花を作ります。
本作は製作費30百万ドルで、興行収入2億11百万ドルの大ヒット作品となりました。

マイナーながら高評価のSF映画を発見したいひとのために!
posted by 齊藤 想 at 21:00| Comment(0) | 映画評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【書評】鈴木伸元『反骨の知将 帝国陸軍少将・小沼治夫』

一般には知られていない軍人、小沼治夫を紹介する本です。


新書790反骨の知将 (平凡社新書)

新書790反骨の知将 (平凡社新書)

  • 作者: 鈴木 伸元
  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 2015/10/15
  • メディア: 新書



小沼治夫はどちらかというと研究者肌です。
日露戦争の研究を命じられて、数字を分析したところ突撃のほとんどが失敗していることを突き止めます。
そこから、白兵戦を重視する従前の作戦に疑問を持ちます。

ノモンハン事件の研究を命じられて、火力不足、補給不足が原因と判断しますが、この意見が上層部に受け入れられることはありません。
また優秀な下士官の損耗が大きく、下士官の能力によって兵士の戦力が大きく変わることを訴えます。

日米戦が始まると、ガナルガダル島に派遣され、命からがら救出されると、今度はルソン島勤務になります。
これだけ火力・補給の重視を訴えてきたのに、ないもの尽くしの戦場では「精神力」に頼らざるを得なくなるところに悲しみを覚えます。

本書ですが、白井明彦氏の研究に大きく依存しています。
人物紹介ではなく、小沼治夫が現役時代にまとめた報告書のまとめみたいになっているのが、少し残念です。

知られざる軍人を知りたい人のために!
posted by 齊藤 想 at 12:00| Comment(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする