2025年02月11日

【映画】ミュンヘン

1972年に発生したミュンヘンオリンピック事件と、イスラエルによる報復作戦を描きます。


ミュンヘン [Blu-ray]

ミュンヘン [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: パラマウント
  • 発売日: 2017/12/06
  • メディア: Blu-ray



映画の冒頭で、「事実に基づく物語」とあります。
つまり実際の事件を題材にしていますが、あくまで創作ということを強調しています。
映画はミュンヘンオリンピック事件から始まります。
パレスチナのテロ組織、黒い九月がオリンピックに出場するイスラエル選手団を人質に立てこもります。
結果は人質・犯人全員死亡です。
イスラエル政府はテロ組織幹部への殺害作戦を実行し、主人公はそのリーダーとして選ばれます。
4人の仲間たちと順番に殺害していきますが、敵の反撃により仲間が殺害されたことがきっかけで、メンバーの精神は徐々に病んでいきます。
最終的に生き残ったのは2人です。
主人公たちがテロ幹部を殺害するたびに、テロ活動は過激さを増します。
テロ事件首謀者の殺害計画に失敗したところで、2人は活動を停止します。
主人公はアメリカに、もう1人は祖国に帰ります。
主人公は敵から狙われていると猜疑心に苛まれます。
祖国から帰国依頼がありますが、主人公は拒否したところで映画は終わります。
この映画ですが作戦に携わったとされる工作員の告白に基づきます。
ですが、当然ながらイスラエルとモサドは否定しています。事実は永久に闇の中だと思います。
殺害計画については、wikiを見た限りだと概ね事実関係に沿っているようです。
ですが、情報屋のルイの存在など、やや眉唾な話かなあ、というのが実感です。
工作員の告白が事実かどうかを考慮せず創作映画と観れば、とても面白いです。
最初は殺害に躊躇して、下手を踏みそうになりますが、成功したときの高揚感がメンバーを包みます。
しかし徐々に進むにつれ、テロ行為が激化し、殺しても次々と後任者が現れる切りのなさ、さらには敵側の反撃などで、メンバーの精神が病んでいきます。
そのメンバーの精神状態に応じて、画面が暗くなり、陰湿な描写が増えていきます。
こうした描き方が、上手いと思います。
この映画でスピルバーグ監督は「反イスラエル的」と非難されたそうです。ちなみに『シンドラーのリスト』ではイスラエル寄りと言われました。
すぐに政治的な目線で映画を評価するのは困ったものです。
アカデミー賞5部門ノミネートも受賞を逃しています。
製作費70百万ドルで興行成績1億31百万ドルはトントンといったレベルでしょうか。

ミュンヘンオリンピック事件について知りたいひとのために!
posted by 齊藤 想 at 21:00| Comment(0) | 映画評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

第18回朝日将棋オープン戦(準決勝・決勝)

だれが優勝しても初優勝です。

〔主催者サイト〕
https://digital.asahi.com/shougi/asahicup_live/?iref=pr_shougi

ベスト4は井田明宏五段、服部慎一郎六段、近藤誠也八段、佐々木勇気八段の4人です。
注目は年度最高勝率を更新する勢いで勝ち続けている服部慎一郎六段です。
準決勝の相手の井田五段は、雁木戦法を得意とする棋士です。井田五段からすれば初めての大舞台で、緊張もひとしおかもしれません。
もうひとつの準決勝は新A級の近藤八段と、現A級で竜王戦挑戦者にもなった佐々木八段です。

〔準決勝〕
 井田明宏五段  ○ ― ● 服部慎一郎六段
 佐々木勇気八段 ● ― ○ 近藤誠也八段

井田五段が得意の雁木からの競り合いを制して、絶好調の服部六段に土を付けました。服部六段は最高勝率更新に向けて一休みですが、まだまだチャンスは残っています。
佐々木近藤戦は角換わりになりましたが、後手近藤八段の攻めゴマを責めるB面攻撃がはまり、中盤以降は大差の快勝です。

〔決勝〕
 井田明宏五段  ● ― ○ 近藤誠也八段

決勝も井田五段は雁木。中盤は互角のねじりあいが続きましたが、大舞台に緊張したのか玉の安全を目指した5二銀が悪手だったようです。薄くなった桂頭を攻められて一気に苦しくなります。
近藤八段がそのまま攻め続け、122手まで近藤八段の快勝。
近藤八段は朝日杯初優勝で、うれしい全棋士出場の棋戦での初優勝となりました。
井田五段は敗れたとはいえ、その名前を多くの将棋ファンに刻み込みました。

近藤八段おめでとうございます!
posted by 齊藤 想 at 18:42| Comment(0) | 将棋 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【書評】中野京子『怖い絵 死と乙女編』

インパクトのある名画22を紹介です。


怖い絵 死と乙女篇 (角川文庫)

怖い絵 死と乙女篇 (角川文庫)

  • 作者: 中野 京子
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2012/08/25
  • メディア: 文庫



冒頭を飾るのが、レーピン『皇女ソフィア』です。
レーピンは『イワン雷帝と息子』などのロシアをテーマにした歴史画を描いていますが、そのうちのひとつです。
これは彼女が幽閉されていた時期を想像で描いたものですが、ソフィアの眼力がものすごいです。
精密な筆力と想像力、さらには漫画のような表現手法がミックスされた傑作だと思います。
フーケ『ムーランの聖母子』も印象的です。
これはシャルル7世時代の宮廷画家だったフーケが、王の愛妾であるアニエスをモデルにしたといわれています。
赤と青の天使という大胆な色遣いに、現代的なスタイル。ディフォルメされた胸。1400年代の作品(つまり、ミケランジェロより前!)とは思えません。
ヨルダーンス『豆の王』は中世農村の宴を楽しそうに描いています。とはいえ、現実はまた別なのですが。理想的な農村を描いたのでしょう。
シーレ『死と乙女』、セガンティーニ『悪しき母たち』も印象的ですが、部屋に飾りたいかと言われたらちょっと違う感じ。
他にもミケランジェロ、ボッテイチェリ、ダビンチ、ルーベンスといった巨匠の作品も紹介されています。

強烈な名画を楽しみたいひとのために!
posted by 齊藤 想 at 12:00| Comment(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする