2025年02月10日

【SS】齊藤想『仮面夫婦』(ChatGPT_90点)

第40回小説でもどうぞ!に応募した作品です。テーマは「演技」でした。
本作は「仲の良い夫婦」を演じなければならない夫婦の話です。
この系統としては、夫婦とも殺し屋だったという映画『Mr.&Mrs. スミス』があります。このパターンは二人が最後まで殺し合うと物語にならないので、基本的には和解で終わります。
ということで、具体的な技法はこちらの無料ニュースレターで紹介します。次回は2/5発行です。



・基本的に月2回発行(5日、20日※こちらはバックナンバー)。
・新規登録の特典のアイデア発想のオリジナルシート(キーワード法、物語改造法)つき!

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『仮面夫婦』 齊藤 想

 夫婦仲は最悪だった。夫の成幸は職場内で不倫をして、妻の彩菜はスポーツジムの経営者といい仲になっている。
 それでも、二人には約束があった。
「娘のルキアの前では、最後まで仲の良い夫婦を演じよう。結婚式で神父の前で誓ったように、死が二人を分かつまでは」
 逆にいうと、相手が死ねば結婚生活から解放される。だから、夫婦とも自宅では油断ができない。
 妻がルキアの幼稚園の用意をしながら、笑顔で朝食を用意する。
「はい、これはルキア、これはパパね」
 彩菜がテーブルの上にシチューを並べる。
「おいしそう!」
 ルキアは喜ぶが、成幸の皿からは怪しげな匂いが漂ってくる。彩菜はシチューに何を入れたのか。
「パパは食べないの?」
「あ、うん。もちろん食べるさ」
 成幸は「仲の良い夫婦」を演じるために、笑顔でシチューを口に含む。咥内がピリピリする。
 彩菜が意味ありげに微笑みかけてくる。
「どう美味しい?」
 成幸は、シチューを飲み込まないように答える。
「うふ、とてもほいひいよ」
「なにそれパパ面白い」
 ルキアが笑い転げるすきに、成幸はトイレに駆け込んで吐き出す。まいったなと思いながら食卓に戻る途中で妙な殺気を感じ、慌てて両足を広げる。
 足の間に、錆びた包丁が刺さっている。彩菜が「うっかり」落としたのだ。
「あら、嫌だ、ごめんなさいね。ちょっと手が滑っちゃって」
 成幸が包丁を拾い上げる。
「ずいぶんと錆びている包丁だなあ。これで野菜とか切れるのかよ」
「切れるわけがないじゃない。それに、破傷風菌とかついていそうだし」
「そうだなあ、危ないよなあ」
 成幸は軽く笑いながら、包丁を返す。
 最近の彩菜の攻撃はますます巧妙になっている。まったくもって油断できない。
 妻とルキアが幼稚園に向かうのを見届けてから、成幸は出社した。面白くもない仕事を夕方まで続ける。
 退社時間が近づいたころ、一本の社内メールが届いた。メールが指示するままに、成幸は人気のない会議室へと向かう。
 その会議室で待っていたのは、成幸の不倫相手である上司だった。彼女は四十代後半で独身。部下には厳しく、社内では一、二を争うほどの嫌われ者。
 それでも、成幸は彼女に猛烈なアタックを繰り返した。上司もひとまわり違う上に既婚者からの求愛に戸惑いながらも、ついつい関係を深めていった。
 もちろん彼女は成幸の家庭の状況を把握している。だから、成幸が顔を出すだけで今日も無事だったと安心する。
 上司はだれもいないのを確かめてから、成幸の体に抱きつく。ふんわりと、甘い香りが立ち上る。
「成幸さん、今日も生きていてうれしい」
 成幸は頭をかきながら、まるで何気ない日常のように話す。
「今朝はかなり危なかったよ。なんとか回避できたけど」
 上司が成幸のことを見つめる。
「笑っている場合じゃないわよ。もう決心するときだわ。彩菜さんを片付けないと、成幸さんが殺されるのよ」
 物騒な話は場所を選ぶ。人の目がなく、だれにも聞かれることのない奥まった会議室は、絶好の場所だった。
「おれには娘がいるから、刑務所に入るわけにはいかないんだ。守るべきところは守らないと」
「だから殺し屋を雇うの」
「バカなことを言うな。殺し屋を雇うだけの大金を動かしたら、警察にバレる」
「大丈夫、私に任せて。私には貯金があるし、それにいいツテがあるの」
「ダメだ。絶対にいけない。君が悪いことをするぐらいなら、ぼくは死んだ方がましだ。だから……そうだな、決めたよ」
「成幸さん……」
 上司の目は、とめどなくうるんでいた。

 ルキアは夕食を食べながら、ママに話しかける。
「パパ遅いね」
 彩菜はルキアに優しく答える。
「パパは仕事で忙しいの。いまが大事な時期だからって」
「パパってたいへんなんだね」
 成幸が帰宅したのは深夜だった。ルキアが目覚めてパパお仕事お疲れ様、と抱きついてくる。成幸はルキアのほっぺにキスをしてから、ルキアを寝かしつける。
 部屋が夫婦の二人だけになったとき、成幸は安堵の息ををついた。
「いやあ、今回は大変だった。けど、これでひと段落かな」
 成幸はスーツの内ポケットから封筒を取り出した。その封筒には数百万円の現金が入っている。
「これが殺し屋を雇うための金だ。自分が雇うと説得して、あの女に金だけ出させた。足のつかない安全な金だ。ところで、そっちはどうだ」
「不倫相手が離婚専門の弁護士を雇うと言い始めたから、あと少しね。あとは現金どう引き出すかだけど、そのために私を攻撃してくれないと」
「そうだなあ」と成幸は本を手に取った。
 お互いに演技は楽ではない。だから、実際に殺されそうになるが一番だ。本当だからこそ話に迫力が出る。不倫相手も信じる。
 殺そうとするが、殺してはいけない。この微妙なラインが難しい。
「お互いに生命保険もかけているとはいえ、ほどほどにね。いつ事故が起こるのか分からないのだから」
 妻の含み笑いを横目で見ながら、成幸は新しいミステリ小説を読み始めた。

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posted by 齊藤 想 at 21:00| Comment(2) | 自作ショートショート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

最近の金融・投資【令和7年2月第2週】

〔先週の株式市場〕
先々週は5連続プラスだったが、先週は1日プラスで4日マイナス。
まあ上がった次は下がる。いつものパターンです。
ここ最近の株式状況を見ると、全体的に弱含みだなあと感じます。
1日の変動をみても、朝はぐーっと上がっても、どんどん下がっていくパターンがとても多い。
これは様子見をしろ、というお達しですかね。はい。

〔スクロールの株主優待が変更になっていた話〕
だいぶ昔の話です。気が付いたらスクロールの株主優待が変更になっていた。
1500pointは予定通りなのだが、使えるサイトが変わってしまい、とても使いにくい。
断腸の思いで、グリーン関係の寄付を選択する。
まあ無駄に流すのももったいないなあと思ったもので。
とりあえず株は持ち続けますが。
posted by 齊藤 想 at 12:00| Comment(0) | 金融・投資 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする