アパルトヘイト政策下の南アフリカを描いた社会派映画です。
アパルトヘイトとは白人が国を支配し、非白人を差別する人種隔離政策です。
1948年から1994年まで続きました。
本映画は1987年公開なので、当時は現在進行形で差別が行われていました。
主人公は南アフリカの新聞社の編集長です。もちろん白人です。彼はリベラルで黒人寄りの人物です。
その彼が黒人解放論者ビコを「人種間憎悪を煽っている」と新聞で非難したことがきっかけで黒人医師から責められ、ビコと面談することに同意します。
そこでビコの人柄に惹かれ、二人はいつしか親友になります。
ビコは警察から軟禁状態に置かれていました。危険を顧みず、様々な活動を続けますが、ついに逮捕され獄中の拷問によって殺されます。
主人公はその真相を暴こうとしますが、黒人寄りとみなされて警察から自宅に銃弾を受けます。国外に出ようとしたら拘束されてビコのような軟禁状態におかれます。
主人公は国外への脱出を決意し、様々な困難を乗り越えて、ついに国外脱出に成功します。
ラストは拘禁中に死亡した政治犯たちの氏名、死亡年、政府が発表した公式な死因を並べて終わります。
現在進行形の強烈な差別を告発する、これぞ社会派映画という感じがします。
冒頭で白人による黒人居住区の強制撤去と暴行という善悪をはっきりさせるシーンから始まり、そこに黒人医師という正義感の強い女性が主人公の白人編集者と黒人解放運動指導者を繋げ合わせます。
この導入部がスムーズかつテーマを明瞭に浮かび上がらせます。
主人公は黒人解放運動に肩入れすることで家族を危険にさらす葛藤とも戦いますが、銃撃事件をきっかけに妻の理解を得られて、脱走シーンがクライマックスです。
白人警察官の嫌がらせが執拗で、巨大な圧力にじわじわやられていく恐怖がとてもリアルです。もっとも本映画は安全上の理由から一部の人名を変えている以外は事実ということなので、リアルなのは当然のかもしれませんが。
それだけ人種差別が過酷だったということだと思います。
監督リチャード・アッテンボロー、脚本ジョン・ブライリ―はアカデミー賞8部門受賞の『ガンジー』と同じコンビです。
この辺りの描き方は、さすがというところでしょうか。
ビコを演じるのは若き日のデンゼル・ワシントンでとてもいい演技を見せてくれます。
賞とは無縁でしたが、とてもよい映画を見せてもらったという気持ちになりました。
差別と闘うことの意味を考えさせられます。
アパルトヘイトをテーマとした社会派映画で考えたいひとのために!
2025年02月04日
【書評】中野京子『怖い絵』
よく知ると怖い名画を解説です。
名画の鑑賞というと、技法に目がいきがちです。
○○派とか、○○時代、というのもよくあります。
本書における名画の鑑賞法は、歴史を重視するものです。
作者の人生、時代背景を知ることで、有名な絵が恐怖にかわります。
有名なホルバイン『ヘンリー8世の肖像』も、作者が置かれた立場を考えると恐怖です。
アルテミジア『ホロフェルネスの首を切るユーディット』も、作者(女性)が師匠にレイプされて裁判に訴えたことを知ると、また違った意味が浮かび上がってきます。
最後を飾るグリューネヴォルト『イーゼンハイムの祭壇画』ですが、小説調の紹介になっています。
名画を鑑賞することが難しかったこの時代、難病を抱えて奇跡を求めてイーゼンハイムまで歩き続け、手足も腐り、死にかけた状態でこの名画に出会う感動を追体験できます。
いまは気軽に絵を楽しめますが、昔はそう簡単なことではありません。
そうしたことを、思い出させてくれます。
名画の隠れた怖さをのぞいてみたいひとのために!
名画の鑑賞というと、技法に目がいきがちです。
○○派とか、○○時代、というのもよくあります。
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有名なホルバイン『ヘンリー8世の肖像』も、作者が置かれた立場を考えると恐怖です。
アルテミジア『ホロフェルネスの首を切るユーディット』も、作者(女性)が師匠にレイプされて裁判に訴えたことを知ると、また違った意味が浮かび上がってきます。
最後を飾るグリューネヴォルト『イーゼンハイムの祭壇画』ですが、小説調の紹介になっています。
名画を鑑賞することが難しかったこの時代、難病を抱えて奇跡を求めてイーゼンハイムまで歩き続け、手足も腐り、死にかけた状態でこの名画に出会う感動を追体験できます。
いまは気軽に絵を楽しめますが、昔はそう簡単なことではありません。
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