2025年02月02日

第50期棋王戦第1局(藤井聡太棋王VS増田康宏八段)

増田八段がタイトル初挑戦です。

〔中継サイト〕
http://live.shogi.or.jp/kiou/

増田八段はその才能を高く評価されてきたので、ようやくタイトル戦に登場といった感じがします。
増田八段は素直な性格なのか、かつてストレートな発言で物議をかもしました。
有名なところだと
「矢倉は終わった」
「詰将棋は意味がない」
というところですが、最近になって順位戦で矢倉を採用し、詰将棋にも取り組んでいるそうです。
それだけ大人になったということかもしれません。個人的にはもっと奔放な発言を続けてもいいようにも思いますが。
かつて増田八段は「年下には負けたことがない」と発言していましたが、増田八段が年下に初めて負けたのが藤井四段(当時・炎の七番勝負)です。
さあ増田八段は、年下相手のタイトル戦で、幸先の良い1勝を上げることができたでしょうか!

〔棋譜〕
http://live.shogi.or.jp/kiou/kifu/50/kiou202502020101.html

ということで、将棋です。
藤井棋王の先手で角換わりとなります。
お互いに通いなれた道なのでサクサクと進みますが、増田八段は32手目に6五歩という研究手を披露します。
意表を突かれたのか藤井棋王は30分を超える考慮でしかけますが、増田八段の研究のレールに乗っているのか、消費時間の差がどんどん広がっていきます。
増田八段が初めて長考したのが56手目です。
藤井棋王の55手目がAI的には評価が悪く、増田八段の研究手順から外れたのだと思います。
ここから増田八段の反撃が始まりますが、持ち時間の差がみるみるうちに縮まってきます。
どこから4四飛という飛車ぶつけの切り札を出せば増田八段が優勢だったようですが、リスクが高い手なので難しかったのかなと思います。
角と銀桂の二枚換えになってからは藤井棋王が優勢となり、最後は鮮やかな銀捨てで増田八段が投了。
藤井棋王は防衛に向けた幸先の良い白星を上げました。

棋王戦第2局は2月22日(土)、北國新聞会館(石川県金沢市)で増田八段の先手で行われます!
posted by 齊藤 想 at 21:34| Comment(0) | 将棋 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【映画】ワンス・アポン・イン・タイム・アメリカ

セルジオ・レオーネ監督の遺作かつ代表作です。


ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ [Blu-ray]

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  • 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • 発売日: 2011/01/26
  • メディア: Blu-ray



「ワンス・アポン・イン・タイム」とは「昔々」という意味です。
禁酒法時代のアメリカで、ユダヤ人地区で育ったギャングの生涯を描きます。
主人公はロバート・デ・ニーロ演じるヌードルズです。
少年時代から仲間たちとチンピラの真似事をしていたのですが、少し年上のマックスと知り合い、マックスを中心に活動を始めます。
しかし主人公はライバルとの抗争の中で相手を刺殺し、止めに入った警官まで刺したことで刑務所に収監されます。
大人になって出所してきたヌードルをマックスたちが迎え入れます。
禁酒法時代の闇パブで荒稼ぎをしますが、禁酒法が終わりを告げるとともにマックスたちは苦境に立たされます。
マックスは銀行強盗を計画しますが、ヌードルは否定的です。ヌードルは警察に情報を渡すことでマックスを助けようとしますが、銃撃戦の末に死亡します。
老齢期に入ったヌードルは、突如として商務長官のパーティーから招待状をもらいます。
商務長官の正体はマックスで、死亡したのは替え玉でした。
汚職が発覚して苦境に立たされていたマックスは、ヌードルに自分を殺してくれるよう頼みます。
ヌードルはそれを「考え方の違いだ」として拒否します。マックスはゴミ収集車に飛び込むことで自殺します。
という感じの映画です。
これ興行的には大失敗でしたが、国際映画祭では絶賛されました。
とにかく長いうえに、フラッシュバックが多用されて時間軸が行ったり来たりします。
箱の構造が何重にも重なっているといいますか。
なので、ちょっと見るのは荷が重い映画ですが、それでも評論家が絶賛したのも分かります。
テーマとしては「時の流れが全てを押し流していく」ということだと思います。
この時の流れを表現するのに、2時間では短すぎる。3時間でもちょっと足りない。
結果的にこの長さになるのは必然だったのかなと。
生き残るのに必死だった少年時代、我武者羅だった青年時代、そしてすべてが遠くに消え去った老年時代。
観た人に何か教訓を与える映画ではありませんが、ある程度の年齢を重ねたひとなら、自らの時の流れに思いをはせる映画だと思います。
ちなみに製作費20百万ドルで、北米での興行収入はわずか5百万ドルです。

長時間の映画を楽しみたいひとのために!
posted by 齊藤 想 at 21:00| Comment(0) | 映画評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【書評】大木毅『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』

独ソ戦は通常戦争ではなく、世界観戦争(絶滅戦争)であったと喝破する本です。


独ソ戦 絶滅戦争の惨禍 (岩波新書)

独ソ戦 絶滅戦争の惨禍 (岩波新書)

  • 作者: 大木 毅
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2019/12/26
  • メディア: Kindle版



第二時世界大戦で、もっとも多くの被害を被ったのはソ連とドイツです。
特にソ連は酷く、死者・行方不明者は1100~1200万人と言われています。
この独ソ戦について、ペレストロイカ以前はソ連の情報公開が進まなかったこと、ドイツは全ての責任をヒトラーに押し付ける傾向が強かったことが重なり、間違った言説が流れてきたというのが著者の主張です。

①ソ連侵攻はヒトラーだけでなく、軍部も前向きだった。
②ドイツによるソ連戦力の見積もりは非常に甘いものであり、緒戦の勝利の段階で補給不足等、敗北への階段を登っていた。
③ドイツは戦術面では優れていたが、戦術を組み合わせる戦略面ではソ連側が優秀だった。
④モスクワを第一目標にしていれば、との説があるが、そもそもモスクワが陥落してもソ連が白旗をあげるとは限らない。
⑤ドイツがソ連に攻め込んだのは、ドイツ国民の生活水準を守るための収奪戦争の意味蟻があり、さらには人種主義に基づく世界観による世界観戦争の意味合いもあった。そのため、ヒトラーは通常戦争のような和平を取りえなかった。

などなどです。
独ソ戦の流れもひととおり書かれているので、とても分かりやすいです。

悲惨な戦争だった、独ソ戦の惨禍を知りたいひとのために!
posted by 齊藤 想 at 12:00| Comment(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする